美術館こぼれ話

姫路市立美術館の日常を綴ります

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年のはじまりは市展

今年も新しい年のはじめを飾るのは「姫路市美術展(姫路市展)」です。
今回で70回を数え、お祝いの意味を含めて特別賞として「第70回記念賞」が設けられました。
戦後70年にあたった昨年は各地でさまざまな催しが開かれましたが、姫路市展の開催回数はその数字に重なります。姫路市展は全国的にみても、戦後最も早く始まった市民美術展の一つとして知られ、第1回展の開催は、戦後の混乱が色濃く残る1946(昭和21)年秋のことでした。会場は姫路市飾磨区の亀山本徳寺で、会期は11月2日から20日の約2週間。このときの展覧会の名称には“復興”という二文字が冠せられていました。
第2回展からは姫路城西の丸が会場となって12回展まで続き、その後、百貨店やまとやしき(現・ヤマトヤシキ)、公会堂、文化センターへと移り、昭和58年第38回展からは市立美術館(一時期、イーグレひめじ・市民ギャラリー)で開催され、今日に至っています。
今、美術館のコレクションギャラリーでは市展の開催にちなみ、「姫路市展ゆかりの作家たち」と題した展示を行っています。
審査員を務めた小野竹喬、新井完、須田国太郎、開催に尽力した洋画家の飯田勇らの作品をはじめ、当時は一般の出品者であった日本画の森崎伯霊、洋画の中井知生、尾田龍、版画の川西英、彫刻では野村正らの作品をご覧いただけます。いずれも第1回姫路市展に関わりのある人たちです。 ただ、展示されている作家の中でただ一人、日本画の丸投三代吉(第10回市長賞)だけはこの展覧会のはじまりには無縁です。彼はそのころシベリアに抑留され、2年余りを極寒の地で暮らしていました。画家としての再出発は帰国後のことになります。
小さな展示ですが、市展に重ねてご覧いただきたいと思います。
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作品搬入風景 2016年1月9日

  • 2016年01月09日(土)13時16分

宮脇愛子さんの「うつろい」

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 昨年も幾人もの美術家が亡くなられた。彫刻家の多田美波さん、舞台美術の朝倉摂さん、第一回安井賞受賞者の田中岑(たなかたかし)さん、現代美術作家の村岡三郎さん、辰野登恵子さん、河原温さん、そして赤瀬川源平さん。個人的な記憶から思いつくままにお名前を挙げさせていただいたが、方々の半生には戦後の昭和という時代が横たわっているように思われてならなかった。
 そして8月には立体造形作家の宮脇愛子さんも亡くなられた。
 ある初夏の明るい昼下がりであったと思う。美術館の喫茶コーナーで顔なじみの画商さんとご婦人がお茶を飲んでいらっしゃるところに出くわした。そのご婦人が、新設成った姫路市城郭研究センター・城内図書館に作品を設置するために来姫された宮脇さんだった。初めてお会いし挨拶した直後、「設置を手伝ってくれない?」とのお声が掛かった。気さくで茶目っ気を含んだお誘いであった。断る理由などあるはずもなく、宮脇さんの指示のもと画商さんといっしょに、新しい建物の屋上で何本ものステンレスの太いワイヤーを穴に差し込み固定していった。そして、宮脇さんの代表作として知られる一連の「うつろい」の一つ(写真)が姫路に登場した。
 この建物は平成2年4月1990年4月開館である。この作品の制作年も1990年となっている。とすれば、あれから25年近くが経ったことになる。
 この作品は建物の2階に上がらなければ見ることができない。2階の回廊を一巡りしながら角度によって表情を変える姿を楽しむことができるが、ここまで足を運ぶ人は少ない。

 拙文を書き終えた直後、江見絹子さんの訃報に接した。明石のお生まれという地縁もあって、当館で個展を開催させていただいたのが4年前のことであった。また、寂しくなった。ご冥福をお祈りするばかりである。

  • 2015年01月16日(金)09時26分

年が明けて

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 昨夏のスズキコージ展以来、ブログに長いブランクができてしまいました。怠慢をお詫びしなくてはなりません。
 その間に、美術館では「米田知子 暗なきところで逢えれば」、「現代郷土作家展 生きるものたちへ」という二つの企画展を開催し、館外(イーグレひめじ市民ギャラリー)では「学校連携プロジェクト展-巨匠たちの夢の続き」と銘打った、高校生たちと美術館のコレクションが交差した展覧会を開催しました。
 海外でも活躍する米田さんの展覧会は多くのマス メディアがさまざまに取り上げてくださり、そのおかげで初めてその作品に触れた方も多かったように思います。写真というメディアの可能性を改めて確認する貴重な機会になりました。そのタイトルに表された米田さんの思いが、心に残った方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。
 また、現代郷土作家展は、タイトルでもお判りいただけるように、播磨地域で活動を続ける作家を取り上げたシリーズ展で、今回は藤原向意(ふじわらさきお)、松田一戯(まつだかずき)、清水浄(しみずきよし)、東影智裕(ひがしかげともひろ)の4人の作家に登場していただきました。それぞれの作品に宿る「生」の形が、同じ地域に暮らす来場者の方々にどのように伝わったのか。いずれにしても、スズキコージ展を含め、これらの展覧会にはわたしたちの住む世界の今が表れていました。
 本日(1月13日)、美術館では姫路市美術展の審査が行われています。審査会場に並べられた作品の熱気が会場に充満しています。美術館の空間は展示されるものによってその表情をさまざまに変えます。年明け最初の展覧会は先述の姫路市美術展、そして2月からは「生誕150年記念 竹内栖鳳」展が始まり、姫路城も会期終了前にグランドオープンします。今年も展覧会だけでなくたくさんの催しが続きます。ご期待ください。

  • 2015年01月13日(火)14時27分

今年の夏は

 今日、6月21日からスズキコージさんの展覧会が始まった。庭ではズキンカフェがオープンし、ラッパやドラムの賑やかなパレード、引き続き会場ではコージさんがライブペインティングのパフォーマンス、夜には七尾旅人さんのコンサートと盛り沢山なイベントで展覧会の幕が開いた。
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 作品は企画展示室だけではおさまらず、通路や休憩所にまではみ出している。展示室は巨大なペインティングで天井まで覆われて壁も見えない。柱は青と黄色の螺旋模様。天井からは大小の妖精たちやバナーがぶら下がり、開催前に会場で公開制作した「巨大妖精怪獣」や小さなオブジェが所せましと並ぶ。
 私は、展示室をさまよいながら場所も時間も定かでなくなり、いつしかアルタミラやラスコーの洞窟に迷い込んだかのような錯覚にとらわれた。確かに、タイトルにも「スズキコージの絵本原始力」とあるとおり、スズキコージという人は原始につながっている。
 昨日、20日の開会式で、スズキさんは愛と平和を願っていること、そして姫路市立美術館が元軍隊の倉庫であり、武器弾薬がつまっていた建物が、今、自分の作品で満たされていることの意味を語った。
 会期は8月31日まで。今後予定されているイベントも数多い。今年の夏は是非とも姫路市立美術館でお過ごしください。

※催しについての詳細は”イベント一覧”をご覧ください。

  • 2014年06月21日(土)15時15分

 畳の上には「座布団」があって、その上にあるのが「楽」だと詠ったのは詩人の山之口獏だった。
 確かに、畳の上に座るとほっとする。その畳も目にする機会が少なくなってきたが、私などはまだまだ畳が恋しくて、家の中に小さくても一部屋だけは畳の部屋を確保したり、たまに、ホテルではなく旅館に泊まってみたりする。
 ところで、ただ今、美術館の企画展示室には畳敷の展示コーナーが設えられていることをご存じだろうか。6月1日まで開催している企画展「名画のあった場所」展の会場には42畳が敷かれ、かつて畳の上で楽しまれたであろう屏風や掛物が展示されている。2、30年ほど前なら、畳の上に座って床の間の軸や鴨居に掛かった扁額を眺める生活がいたる処にあったように思うが、今となってはそんな空間が新鮮ですらある。気のせいだろうか、飾られている作品も何故か普段と表情が違って見える。
 できればこの展覧会が終わっても畳の展示場がほしいものだと空想する。屏風や軸は、畳の上でゆったりとした気分で眺めたい。床の間や専用の和室までほしいとはいわないが、畳の敷かれた展示場で座布団に座って楽と一緒に過ごしたいものだ。

  • 2014年05月04日(日)08時03分

時は春

 前回のブログから随分時間が経ってしまいました。年度末という慌ただしい日々の中で右往左往しているうちに時間が経ってしまいました。
 そして、いい季節になりました。
 ――時は春
    日は朝(あした)
    朝(あした)は七時――
 朝の光の中で、知らずしらず口ずさんでいました。
 今、姫路城の周辺はサクラが満開で多くの人たちで賑わっていますが、花びらが舞うころになるでしょうか、美術館では「名画のあった場所」展が始まります。
 本展では、現在、美術館に収蔵されている作品がかつて飾られていた場所を再現し、普段とは違う設定で作品を展示します。それぞれの作品はどのように表情を変えて私たちの前に現れるのでしょうか。
 中でも、当館と名古屋のヤマザキマザック美術館が所蔵するポール・デルヴォーの4枚の板絵に注目してください。これらの絵は、かつてベルギーで個人の邸宅の壁を飾っていました。長い間離れ離れになっていた壁画が、一部ではありますが遠い日本で再会を果たします。また、デルヴォー財団の協力を得てベルギーから壁画の下絵もやってきています。
 創られたものそれぞれには事情があり、異なった履歴を背負っています。美術館にやってくる前の作品の過去を、季節の移ろいの中で思い描いてみるのも一興かと思うのですが、いかがでしょうか。

  • 2014年04月05日(土)15時51分

初春のご挨拶

 あけましておめでとうございます。
 皆様におかれましては、よいお年をお迎えのことと存じます。
 私はといえば、数年前から朝は早くに目が覚めます。おかげさまで初日の出も苦も無く拝むことができました。
 さて、今年の美術館の始まりは「姫路市民美術塾」です。本日7日の開会です。
 初めての試みですが、美術館の収蔵作品をより広く、より深く知っていただけるようにとの思いから企画した催しです。テーマは「もっと知りたい!青山熊治~熊治さんの旅~」(1/7~26)、続いて「~熊治さんと仲間たち~」(3/8~23)の二つです。いずれも、昨年の秋に開催した「青山熊治展」をきっかけにして、展覧会では伝えきれなかった画家の姿やウラ話を、作品や資料を前にクイズやトークイベントを通して紹介します。キーワードは《名品》《交流》《体験》の三つ。
 27歳でシベリア鉄道でヨーロッパに向かい、36歳のころ帰国するまでの放浪にも似たこの画家の旅路と、その周辺の人々との交わりを追体験していただきたいと考えています。
 小学生から大人まで幅広くお楽しみいただけることと思います。
 会場は、美術館を出て駅寄りのお城の南側、大手前公園に面した“イーグレひめじ”の地下一階の特別展示室です。ご注意ください。
 最後に、皆様のご健勝を心からお祈り申し上げます。
 今年も美術館にご注目ください。
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  • 2014年01月07日(火)07時25分

11月になって

 10月20日、「青山熊治展」が終了しました。残念ながら、入場者は期待したほどではありませんでしたが、見てくださったみなさんの反応はよかったと思っています。熊治のふるさとである生野からも大勢の人たちがバスを仕立てて来てくださいました。熊治は若いころに生野を飛び出し、ふるさとを指してここで死にたくないといったこともあったようですが、亡くなって80年余りが経ったいまも、ふるさとは熊治にやさしくありました。熊治もはにかみながら感謝したことでしょう。
 いつものことながら、展覧会が終ってもしばらくは後を引いてしまいますが、既に2日からは「広重展-海の見える杜美術館所蔵」がはじまっています。
 歌川広重(安藤広重)といえば《東海道五拾三次》が有名ですが、花鳥画においても知られた浮世絵師です。今回のように240点におよぶ花鳥画が一堂に展覧されることは稀なことで、それだけでもお勧めですが、今回は一般的な額装仕立てではなくマット紙も使わずに透明なアクリル板で挟んだだけの展示方法をとっています。いわば裸の状態で、より身近に作品に接していただくことができるかと思います。また、照明にも工夫を凝らしています。作品保護を考えた照度を保ちながら暗さを感じさせず、やわらかな光で作品を静かに浮かび上がらせることができました。こうした展示の妙も作品と合わせて体感していただきたいと願います。江戸末の広重という絵師と彫師、摺師の技が一体となった浮世絵版画の魅力をダイレクトに受け止めてください。
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  • 2013年11月03日(日)12時24分

夏が終わって

 「美術館に行こう ディック・ブルーナに学ぶモダンアートの楽しみ方」の閉会に合わせたかのように、夏が唐突に終わってしまいました。私が赴任して二つ目の展覧会の終了です。祭りのあとのような淋しさはいつものことですが、ガランとした展示室に立つと、子供たちの声がまだ美術館のあちこちに残っているような気がします。何か彼らの心に響くものがあったなら嬉しいのですが、どうだったでしょうか。
 “うさこちゃん(ミッフィー)”といっしょに見てもらった当館のコレクションはすでに収蔵庫に戻り、“うさこちゃん”とブルーナの作品は次の展覧会のためにトラックに乗せられて移動してしまいました。子供たちには、またどこかであの作品たちに再会してほしいものです。
 ところで、美術館では休む間もなく9月14日からの展覧会「青山熊治展」の開会を目前にして、担当者は作業に追われています。一般に企画展は開催を決めてから短くても2年ほどの時間を要しますが、思えばこの展覧会はけっこう長い時間がかかっています。
 青山熊治は、明治19年に生野に生まれた洋画家ですが、生野には青山に先んじて上京し画家になった白瀧幾之助、和田三造という二人の先輩がいます。当館では、開館以来、この三人の洋画家に注目し、和田三造展を2009年に、続いて白瀧幾之助展を2010年に開催し、今年、三人目の青山熊治展の開催に至りました。和田展の準備期間から振り返れば、約7年の時が流れています。
 時をおかず、この画家たちの展覧会を開催することは、ゆかりの深い身近な画家をとおして、私たちが洋画と呼ぶ絵画の成り立ちを考えるきっかけになることを期待してのことでもありました。3部作の最後を飾る7年越しの展覧会、少しでもたくさんの方々にご覧いただけますよう。

  • 2013年09月05日(木)12時54分

残暑が続いています

 厳しい残暑が続いていますが、美術館はディック・ブルーナのミッフィー(うさこちゃん)のおかげで、子供たちの楽しそうな声が聞かれます。展覧会の会期中限定で販売されているミッフィーのクッキーも好評で、喫茶コーナーではクッキーをトッピングしたアイスクリームも用意しています。実はこのクッキー、姫路市社会福祉事業団“クッキー工房樫の詩”で作ってもらっているのですが、注文が多くてクッキーの型が壊れないかと心配するほどです。展覧会は9月1日(日)が最終日。夏休み中に是非ご覧ください。
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 ところで、今年も美術館の庭でキャッスル・ジャズバンドがたそがれコンサートを開いてくれました。パーソナリティの三浦紘朗さんの軽やかな司会とともに、たくさんの皆さんがディキシーランド・ジャズを満喫されたことと思います。はじめて美術館でキャッスル・ジャズバンドに演奏してもらったのは1991年の夏、「ベン・シャーン展」の会場でした。それから数年後、庭ではじまったたそがれコンサートも今年で19回目を迎え、1200人を超える市民のみなさんが参加してくださいました。来年は20回目、是非ご期待ください。
 9月に入ると青山熊治展がはじまります。また、高階秀爾先生の講演会をはじめとする30周年の記念事業も盛り沢山です。秋は美術館にご注目ください。

  • 2013年08月21日(水)10時34分
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