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姫路科学館・昆虫マンガ「カブちゃん」第57話

カブちゃんは、「姫路科学館だより」に掲載されている4コマ漫画です。

第57話~カブちゃんの世界も冬支度!?の巻~

カブちゃんの世界も冬支度!?の巻

バッタ博士のミニ知識【昆虫の休眠と幼若ホルモン】

 変温動物である昆虫にとって冬を越すための戦略は大変重要です。多くの昆虫は厳冬期など生活しにくい季節には、生命活動を最低レベルにする活動停止によりエネルギーを温存して生きていますが、その活動停止には「休止」と「休眠」の2種類があります。
  「休止」は昆虫にとって一時的に活動しにくくなった環境下で起きることですが、一方の「休眠」は長期の生育段階の中でプログラムされているかのように起こります。
 昆虫の種によって「休眠」に入る発育の段階は決まっており、また冬の「休眠」に入った昆虫は一定の低温期間を経なければ「休眠」から覚めることがありません。ですから一年に一回成虫となる昆虫の場合、毎年必ず決まった時期に特定の段階で「休眠」に入ることになります。このことで覚醒の時期が揃いますから、成虫となって繁殖活動をする時期も揃います。これは、そうした生育周期を持つ種が有利に繁殖して生き延びてきた結果なのでしょう。
 昆虫の「休眠」を誘引する因子としては、日照時間、温度、植物(食物)の変化などが挙げられます。これら外界からの刺激によって、昆虫の内分泌器管であるアラタ体、前胸腺、神経分泌細胞から様々なホルモンが分泌されて生育段階が司られています。このうち「休眠」に関連するホルモンは、主に幼若ホルモン(Juvenile hormone:JHと略されます)と呼ばれアラタ体から分泌されます。
 幼若ホルモンは、昆虫の成長および変態を調節する中心的ホルモンの一つで、変態を抑制しながら幼虫の成長を促進する作用があります。その化学構造は昆虫の種類ごとに少しずつ異なっています。