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姫路科学館・昆虫マンガ「カブちゃん」第56話

カブちゃんは、「姫路科学館だより」に掲載されている4コマ漫画です。

第56話~おいしい柿 見つけた!? の巻~

おいしい柿 見つけた!? の巻

バッタ博士のミニ知識【柿の渋味の秘密・タンニン】

 柿 (カキノキ科カキ Diospyros kaki Thunb.) の渋味の原因はタンニンですが、このタンニン(tannin)は植物の葉などに含まれるポリフェノールの総称で、革をなめす(tanning)ときに使われることが語源です。
 ポリフェノールは、ポリ(重合した)フェノールという意味で、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)を持つ植物成分の総称です。柿のタンニンはカキタンニンと呼ばれますが、柿の実ばかりではなく、柿の葉にも含まれています。「柿の葉寿司」が有名ですが、殺菌力や防虫効果があることから利用されてきました。また、強力なタンパク質凝固作用を持つことから、清酒の清澄剤や防腐剤としても利用されています。
 渋柿では「柿渋」と呼ばれる1~2%程度の水溶性タンニン(カキタンニン)が含まれているために強烈な渋味を感じます。水溶性タンニンはタンパク質に結合し収斂させる作用があるので渋く感じるわけですが、甘柿や渋抜きをした渋柿(干し柿など)では、これらのタンニンが不溶性のものに変化しているために渋味を感じなくなります。渋柿の実を干して乾燥させることで、タンニンが水溶性から不溶性に変化して渋味を感じなくなり甘味だけが残るのです。
 柿の実が渋くて甘いのは、自ら動くことのできない植物としての種子の散布に、その方が有効に働くからです。柿の種子は主にムクドリやカラスなどの鳥類によって運ばれていますが、単に柿の実が甘いだけでは実の中で種子が育つ途中で食べられてしまいます。はじめは水溶性タンニンが多くて渋かった柿の実が、熟するにつれて少しずつ甘味を増していくのは、散布に最適の段階まで種子が育ったところで水溶性タンニンが減り始め、鳥類に捕食されることで種子が散布されてきたからです。
 生命の食物連鎖に基づく自然の仕組みは本当に巧妙にできているものですね。