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《 姫路発 》お城からの手紙

2023 Spring vol.91

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姫路城を背景に進む大名行列
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姫路城を背景に進む大名行列
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手にしているのは金御紋付対挟箱(きんごもんつきついはさみばこ)

姫路お城まつりを舞台に
わくわくする
歴史体験を

戦後間もない1948(昭和23)年、姫路城を復興のシンボルとして始まった「姫路お城まつり」。3日間、姫路城周辺は薪能やステージイベント、総踊り、良さ恋などでにぎわいます。中でも白亜の天守を背景に、江戸時代の衣装を身にまとった人々が行う大パレードは大きな見どころ。2021(令和3)年から、そのトリを務めるのが現代によみがえった大名行列です。
このプログラムは、平成31年度文化庁補助事業「Living History(生きた歴史体感プログラム)促進事業」を活用したもの。姫路藩酒井家7代藩主の酒井忠顕(ただてる)が京都に向かう様子を描いた「顕徳院様将軍御名代上京行列図」など、当時の絵図を参考に衣装や道具、持ち物など約900点あまりを再現。2022(令和4)年は、公募で集まった約100人もの市民が足軽や御徒士(おかち)、殿様を演じました。
先頭を担うのは行列の通行を知らせる先払(さきばらい)の御先払足軽。次に徳川将軍から賜ったタカを再現した鷹匠が。そして前衛部隊として弓隊、槍隊、鉄砲隊が続きます。動物の毛で飾られたやりや立派な衣装を身にまとった人がやって来たら、それは本陣です。殿様が乗るかごを担ぐのは「陸尺(ろくしゃく)」と呼ばれる、美男で体格のいい人足たちです。長い道中、殿様はかごに乗ったり、馬に乗ったり、ときには歩いたりもしたそう。当時の絵図には恐れ多いということから殿様は描かれておらず、その衣装などは明治時代の肖像画などを参考にしました。
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将軍から拝領したタカを携える鷹匠
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弓立を持つ弓隊
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将軍から拝領したタカを携える鷹匠(たかじょう)
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弓2本と矢籠、弦巻(つるまき)を一緒にした弓立(ゆだち)を持つ弓隊
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装飾性の高い空穂(うつぼ)には矢が収納されていました
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黒毛槍(やり)は大名行列をより目立たせるためのもの。黒い鳥の羽でやりを飾っています
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家格の高い大名しか使用が許されなかった虎皮鞍覆(とらがわくらおおい)の掛かった御召馬
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装飾性の高い空穂
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黒毛槍は大名行列をより目立たせるためのもの
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虎皮鞍覆の掛かった御召馬

大名行列は威信を懸けた戦いの場

江戸時代の大名行列は、大名家の格式や権威を誇示する意味合いがありました。一つ一つの道具類がデザイン性に富んでいるのも、見た目が重視されたから。朱塗りや金箔(きんぱく)、獣毛を使った華やかな物が多く見られます。また、石高により行列の人数や隊列などが厳格に定められていたそうです。そのため、行列に参加している大多数は、日雇いの武家奉公人であったというのも興味深いですね。
実は、江戸の業者から、その所作が伝わったといわれるのが長野県飯田市「本町三丁目大名行列保存会」の大名行列です。同会が姫路藩ゆかりの道具を持っていたことをきっかけに、150年続く大名行列を姫路お城まつりでも披露してくれました。歩きながらのポーズや道具の受け渡しまで、行列の最中に行われる所作はとても優雅。パフォーマンスとしての大名行列の様子を今に伝えています。
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飯田の大名行列の様子1
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飯田の大名行列の様子2
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飯田の大名行列の様子。1872(明治5)年に始まった伝統行事で、江戸時代の参勤交代の様子を再現しています
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土蜘蛛のクライマックス

姫路城を背景に
古式豊かな能を味わう一夜
お城

薪能とは、野外に設置された舞台で、かがり火を明かりとして上演される能や狂言。ぱちぱちと音を立てるまきの音、風にゆらめく炎、風や星など自然をBGMとして幽玄の世界を堪能できます。姫路城薪能は、ライトアップされた姫路城の天守を背景に披露される唯一無二の薪能。始まりは1971(昭和46)年で、市のシンボルである姫路城をPRし、新しい魅力を創出しようと、市内の医師や商店主、会社役員ら地元有志の企画でスタートしました。以後、姫路お城まつり初日のメインイベントとして、50回を超えて上演されてきました。
当日、三の丸広場には本舞台と演じ手が登場する橋懸かり五色の揚幕、階(きざはし)(白洲梯子<ばしご>)などが設置されます。御幣(ごへい)やちょうちんもつるされ、神聖な雰囲気に。能奉行が階から舞台に上がり、舞台を改めると能がスタートします。実は、この儀式は江戸時代、将軍が見るような公式な舞台で、催しの責任者が舞台の始まりを告げたもので、姫路城薪能がいかに古式にのっとった舞台であるかが分かります。
日没が近づく第二部の初めに「火入れ式」が執り行われます。姫路神社の宮司から種火を受け取り、厳粛な雰囲気の中、舞台のかがり火に明かりをともします。次第に闇は深くなり、姫路城のライトアップと火の粉を散らしながら燃えるかがり火が舞台を幻想的に彩ります。
2022(令和4)年の演目は土蜘蛛。見どころは、放物線を描くようにシテから放たれる千筋の蜘蛛の糸です。炎の明かりに照らされた白い糸が華やかで、見る者を魅了しました。
2023(令和5)年は、姫路城が日本初の世界遺産に登録されて30年となる記念の年。これを祝った曲や姫路とゆかりのある曲目が演じられる予定です。
第73回 姫路お城まつり 2023(令和5)年 11月10日(金)〜 12日(日)開催
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姫路城薪能
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「半蔀」
第51回姫路城薪能の様子
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観客から笑いが沸き起こる狂言
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火入れ式の様子
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土蜘蛛(ぐも)のクライマックス
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火を絶やさないようにまきをくべながら
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前半に上演された「半蔀(はじとみ)」
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観客から笑いが沸き起こる狂言
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火入れ式の様子
問い合わせ/姫路薪能奉賛会
電話/079-281-6800(清交倶楽部内)
https://himeji-takiginou.org/wp/
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備前丸

姫路城に迫力のプロジェクションマッピングが!

2016(平成28)年からスタートし、姫路城のナイトイベントとして定着しつつあるのがライトアップイベントです。姫路城をライトで照らすだけでなく、光と音楽を融合させた迫力のプロジェクションマッピングを採用し、姫路城という文化財とデジタル映像が融合した新たな美を生み出しています。
2022(令和4)年のテーマは「千の願い、月への想い」。千姫の生涯をモチーフに、それぞれ西の丸の「運命の出会い」や上山里曲輪の「幸せの日々」など五つのエリアで千姫の足跡をたどりました。クライマックスは備前丸「願いの広場」。巨大なミラーボールが光を放ちます。しばらくすると大きな月が姫路城にかかり、すうっと動いていく様子を見ていると、夢幻の世界へ誘い込まれてしまいそうでした。SNS映えする写真が撮れるのもうれしいポイントです。
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上山里曲輪
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千姫・忠刻夫妻の「運命の出会い」を表現した光あふれる道
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ミラーボールから放たれた光の粒が備前丸を埋め尽くしました
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色とりどりのカラーボックスが登場した上山里曲輪
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千姫・忠刻夫妻の「運命の出会い」を表現した光あふれる道

四季折々
桜、ボタン、菊
みやびな花のイベントも
雲

春になるとソメイヨシノやヤマザクラ、シダレザクラなど約1,000本の桜が咲き誇る姫路城。4月初旬に三の丸広場を中心に行われる観桜会では、琴の演奏や和太鼓演奏が繰り広げられ、地酒などの飲食ブースやお茶席なども堪能できます。同時に開催されるのが夜桜会。約70本の桜がライトアップされるほか、プロジェクションマッピングやカラーライティングなどが楽しめます。また、桜が散る頃に咲き誇るのがボタン。三の丸にある高台「千姫ぼたん園」で、お茶をいただきながら眺めるボタンは格別です。
秋の風物詩は観月会。中秋の名月の日の夜に開催され、三の丸広場ではさまざまなステージイベントが開催されます。例年、多くの人が楽しみにしているのは地酒や食事のおもてなし。お月見団子や揚げかまぼこ、姫路おでんなどを味わいながら月をめでるなんて粋ですね。秋が深まる10月下旬から11月中旬には菊花展も。大菊や盆栽菊など約60作品が並びます。
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姫路城を美しく彩る桜
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菊花展
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「日本さくらの名所100選」にも選ばれた姫路城を美しく彩る桜
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大小さまざまな菊が出来栄えを競う菊花展