皆さん、こんにちは。
秋も深まり、当館屋外のカメたちも間もなく冬眠に入ります。
さて、今日ご紹介するのは、淡水ガメの『はい出し』についてです。
淡水ガメの『はい出し』??
いったい何のことか分かりませんよね(苦笑)。
私たちが川などで見かける淡水ガメには、イシガメ、クサガメ、アカミミガメ(ミドリガメ)などがいます。
カメたちは、5月から7月ごろに土の中に卵を産み落とします。
土の中に産み落とされた卵は、土の中で成長して、赤ちゃんとなってふ化し、やがて地表へとはい出てくるのです。
実は、淡水ガメの場合、このはい出でくる時期がまだよく分かっていないのです。
一般的には、イシガメはその年の夏から秋にかけて出てきて、クサガメとアカミミガメは次の年の春まで土の中でじっとしている場合が多い、と言われています。
しかし、実際はどうなのか、きちんと調べた研究はあまりありません。
そこで、当館では、屋外の産卵場で産み落とされた卵からふ化した赤ちゃんが、いつ、どのような条件になったら地表にはい出てくるのか、調べているのです。
これが、はい出しを調べているようすです。
黒い筒の下、土の中には、各種の淡水ガメの卵があり、地中に温度や湿度を記録する小型装置を埋めて、いろいろなことを調べています。
先ほど、クサガメとアカミミガメでは次の年の春まで土の中にいる場合が多いと書きましたが、
一部は産み落とされたその年の秋にはい出てくる場合もあります。
10月中旬、筒の中をのぞくと、はい出たばかりのクサガメの赤ちゃんがいました!
小さな赤ちゃん、かわいいですね!
この赤ちゃんの場合、7月15日に卵で産み落とされたので、約3か月も土の中にいたことになります。
その日は少し暖かな日だったので、何かの刺激を感じて、いっせいにはい出てきたのかもしれません。
でも、この時期に地表に出てきたとしても、すぐに寒い冬に突入してしまいます。
エサもなく、活動も少なくなって、次の春まで水辺でじっと待たないといけません。
そうしているうちに、外敵におそわれるかもしれません。
そう考えると、ふ化しても次の春までじっと土の中で過ごす方が安全ですし、体力を温存できるのでないか考えてしまいます。
どうして秋にはい出るのか・・・
どうして次の春まで土の中で過ごさないのか・・・
淡水ガメにはまだまだ分からないことばかりです。
こうした調査をとおして、少しでも淡水ガメのくらしを明らかにしていきたいと思います。
(タケダ)