令和4年(2022年)12月1日(木曜日)
担当課 姫路文学館 学芸課
担当者 竹廣
電話番号 079-293-8228
揖保郡太子町出身の歌人・安田青風(1895年から1983年)の生涯と独自の歌の世界を紹介する展覧会を開催します。
みづからの歩幅で歩くほかはない道にさく花たんぽぽ・すみれ
兵庫県揖保郡太子町に生まれた歌人安田青風。わずか14歳にして小学校の准訓導(教員)となって間もなく短歌を作り始め、87歳で亡くなるまで、70年以上にわたり歌とともに生涯を送った。その生き方は、激動の時代のなかで常に歌を通して自らの心に向き合い、真理を追究しつづける「歌の道」というべき、真摯な姿勢に貫かれていた。歌人として、各地で多くの人々に短歌の魅力を伝え後進を育んだ青風は、教師としても、若き日よりペスタロッチを理想として、新しい教育に情熱を注いだ人であった。
戦後間もない昭和21年(1946年)には、戦争によって荒廃した人々の心に寄り添うべく、長男章生(あやお 1917年‐1979年)とともに「知的抒情」を提唱して歌誌「白珠」をいちはやく創刊。親子で関西屈指の歌誌に育て上げた。一方、「一燈園」の創始者である西田天香や、石丸梧平ら宗教家とも長く交流し、生得の求道精神を磨き上げていった青風の歌には、次第に思想性が深まり、そこに老境のユーモアや軽みが加わって独自の歌の世界を築いた。教え子の一人、随筆家の岡部伊都子は、青風を「清澄な風のように、透明な存在」と評した。その名のとおり「青い風」のようであった歌人が去って四十年。その豊かな人生の遍歴と、人が生きるということの喜びと悲しみを現代を生きる私たちの心に寄り添うように教えてくれる味わい深い作品の魅力に迫る。
安田青風プロフィール
やすだ せいふう
明治28年(1895)から昭和58年(1983)まで
兵庫県揖保郡石海村吉福(現、揖保郡太子町吉福)生まれ。本名・喜一郎。14歳にして小学校の准訓導となる。15歳の頃から短歌を作り始め、「現代詩文」(服部嘉香主宰)、「詩歌」(前田夕暮主宰)、「未来」(三木露風主宰)、室生犀星、山村暮鳥、萩原朔太郎らの「卓上噴水」などに加わり詩歌を発表。大正4年(1915)、姫路師範学校本科第一部卒業。旧制龍野中学校、山崎高等女学校等で教鞭をとる。昭和3年(1928)、水甕社に入り、尾上柴舟、石井直三郎に師事。昭和12年、相愛高等女学校に転任のため、大阪府豊中市に転居。戦後、長男章生(歌人・国文学者)と共に、歌誌「白珠」を創刊。相愛高等女学校教頭を退いた後も大阪樟蔭女子大学講師、大阪城南女子短期大学教授として国文学を講じる。兵庫県立太子高等学校、太子町立石海小学校、宍粟市立山崎南中学校など校歌の作詞を数多く手がけ、大阪住吉大社、たつの市紅葉谷をはじめとして、各地に歌碑がある。昭和39年(1964)、大阪芸術賞(現・大阪文化賞)受賞、昭和43年(1968)、勲五等双光旭日章受章。昭和50年(1975)、太子町名誉町民となる。
主な歌集に『春鳥』(昭7)、『街空』(昭和22)、『歳月』(昭25)、『季節』(昭30)、『遍歴者』(昭39)、『立岡山』(昭55)がある。
令和5年1月14日(土曜日)から3月26日(日曜日)まで
姫路文学館 北館
一般310円、大学生・高校生210円、中学・小学生100円(常設展料金)
姫路文学館
原稿や書簡、揮毫掛軸、短冊、色紙、書籍や雑誌、新聞、写真等約200点で構成。
青風の故郷・揖保郡太子町吉福と、故郷のシンボルである立岡山などを歌や文章とともに紹介。
14歳で出会った少女との初恋。自由な恋愛がはばかられる大正時代にあって、その苦しい恋が、少年を詩人にした。青風が姫路の地方新聞「鷺城新聞」に投稿していた作品を発掘し初公開。また三木露風らの知遇を得て、中央詩壇とも積極的に関わった師範学校時代を紹介する。
大正デモクラシーのさなか、新しい時代の教師として、朝鮮にもわたり、龍野や山崎など赴任した各地で社会教育、生涯教育の啓蒙活動に、さらに短歌の魅力を伝えるために果敢に行動した時代をさまざまな資料で紹介。
終戦により、それまでの価値観が一転するなか、青風は短歌と改めて真摯に向き合うこととなった。短歌によって、荒廃した人心に灯をともすべく、長男章生(あやお)とともに歌誌「白珠」を創刊した青風。やがて関西有数の歌誌となった同誌の成長は、青風のその後の生き方そのものを表している。
生得の求道精神を磨き上げていった青風の歌には、年齢を重ねるごとに思想性が深まり、そこに老境のユーモアや軽みが加わって独自の歌の世界をひらいた。
青風の最晩年を二つの悲劇が襲った。最愛の妻サワノの急逝と、二人三脚で「白珠」を支えてきた長男章生の死。そして最晩年の彼の心のよりどころであった故郷。最後の帰郷となった日を紹介。
会場はいずれも講堂(北館3階)
【寄稿】安田純生「川の歌人、青風」
【寄稿】故岡部伊都子「青風先生の風」(再録)
編集 姫路文学館
発行日 令和5年1月14日
価格 1000円(オールカラー・40ページ)
安田青風展チラシ
姫路市役所観光スポーツ局観光文化部姫路文学館
住所: 〒670-0021 姫路市山野井町84番地
電話番号: 079-293-8228 ファクス番号: 079-298-2533
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