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    就任のご挨拶

    • 公開日:2019年6月5日
    • 更新日:2022年8月29日
    • ID:7615

    姫路市立美術館 館長 不動 美里

    この度、姫路市立美術館館長を拝命いたしました不動美里と申します。永田萠前館長の名誉館長就任にともない、後任といたしまして、歴史ある当館の継承発展に全力を注いでまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

    アートは人間の長い歴史において人の生き方や社会の在り方、ひいては世界観のリニューアルに大きな影響を及ぼしてきました。21世紀に入り、国境を越えて価値の多様化、流動化が進むにつれ、未来は予測不能で不確実さを増し、加えて地球規模の環境汚染は災害を激化させ、勃発する紛争や迫害は後を絶ちません。夥しいデジタル情報が溢れるなかで、私達は一人一人の考え方や行動が日々問われる状況におかれています。しかしどんな時代であっても、そして現在も世界中で、繊細な感受性と深淵な思考をもって果敢に表現に挑む人々―アーティスト達(或いはその名で呼ばれない人々も含めて)は、卓越した芸術表現によって人間の知覚の可能性を拡げ、明日の世界観を築く新たな価値観を創造し続けます。

    2019年末に新型コロナウィルスが出現して以来、人類史上未曽有のスケールと言われるパンデミックを経験するなかで、姫路市立美術館は2021年度より4カ年事業計画「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」をスタートし、今まさにこのプロジェクト推進のただなかにあります。

    オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト

    ″オールひめじ(All Himeji)″は、″全姫路の・姫路全体の″を意味し、″アーツ&ライフ(Arts and Life)″は、人間が技と叡智を結集して生み出してきた多様な芸術(Arts)と生きとし生けるものの生命活動(Life)の関係を包括的に差します。

    姫路を代表する文化資源と言えば、まず近世城郭建築の粋・姫路城、千年の仏教文化の殿堂・書寫山圓教寺、そして宮山古墳をはじめ数多の古墳群がよく知られています。このプロジェクトによって当館は、美的な価値や芸術的創造性という美術館ならではの専門的視座から、これら著名な国指定の重要文化財群はもちろんのこと、海・島・山・森林・田園、豊かな風土に恵まれた姫路全域が擁する有形・無形の地域文化を射程に、さまざまな分野の第一線で国際的にご活躍中の5人のアーティスト、日比野克彦氏、杉本博司氏、中谷芙二子氏、チームラボ、隈研吾氏を招き、市民の皆さんとともにアートの力で市民ライフの糧となる魅力を再発見していきます。さらに美術館自体が新たな価値を創出するいきいきとした「創造の現場」となり、地域社会に根差した文化芸術クラスターが生まれることを促す拠点「プラットフォーム」としての役割を担ってまいります。

    3重の文化財活用が導くビジョン

    国の「特別史跡姫路城跡」に立つ当館の建物は、元々、旧日本陸軍第十師団の倉庫として建てられた煉瓦造建築です。1905年(明治38年)頃に西館が、次いで1913年(大正2年)に北館が建ち、軍都姫路の兵器庫・被服庫として使われました。第二次世界大戦終戦の年の姫路大空襲で中心市街地が焦土と化すなか、姫路城とこのレンガ館は苛烈な戦禍を潜り抜け、先人のただならぬ努力によって今に残されてきました。敗戦後の1947年(昭和22年)より、このレンガ館は市役所として増改築して活用され、1980年(昭和59年)に新庁舎ができるまで戦後姫路の復興と成長を司る要という使命を担いました。庁舎移転に伴い、「市民の美術文化の高揚を図る」ことを設置目的とする美術館として内部改修され、1983年(昭和58年)に市民待望の美術館が開館。翌年には博物館法における登録博物館となり、以来「優れた美との出会いの場」として「世代を超えて親しまれ、気軽に訪れることができる心のオアシスとして、市民とともに成長発展していく」という当時としては極めて先進的で先見の明に満ちた理念を謳う公立美術館として歴史を重ねてきました。2003年(平成15年)には、兵器庫として建てられた煉瓦造建築が、「一時期市庁舎として使用され、後に美術館となった。姫路城の一角にあって、姫路市の近代の歩みを示す建物として親しまれている。」という評価を受け、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として建物が国の登録有形文化財となりました。

    近年、当館では「近世城郭の『国の特別史跡姫路城跡』に在る庭園付き近代建築『国の登録有形文化財』を館(やかた)とし、その内部では『国宝・国指定重要文化財』級の美術品を安心安全に保存し展示公開できる美術館機能を備える」という類まれな自館の特徴をより伸展させるため、「3重の文化財活用が実現できる美術館」を標榜して文化庁のご指導の下に環境改善を図ってきました。こうしたなかで2020年(令和2年)に施行された「文化観光推進法」に基づき、「姫路市立美術館を中核とした文化観光推進拠点計画」を策定し、2021年、当館は県下で初めて文化観光推進拠点施設として計画認定を受けました。同計画においても、将来さらにこの特徴あるポテンシャルを十全に発揮できるよう、施設機能の強化を図る中長期ビジョンを描きます。

    未来を開くメモリアルイヤーに

    2023年度(令和5年度)に当館は開館40周年を迎えます。またこの年は、姫路城の世界文化遺産登録30周年にもあたる意義深い記念の年となります。さらに2025年度(令和7年度)は、「いのち」を主要テーマとしてポストコロナ時代の未来を描く国家プロジェクト、日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)開催年が到来するなどメモリアルイヤーが続きます。

    かつての軍都姫路の武力のための兵器庫・被服庫が、人間の尊厳に立脚する民主主義行政の拠点という道程を経て、市民社会の成熟の証である「美術館」へ、言うなれば心の兵器庫・被服庫へと見事な再生を遂げたという誇るべき史実の重みに思いを致せば、この場所に集積する市民の皆さんの何世代にもわたる命の軌跡と喜怒哀楽の記憶そのものがかけがえのない文化資源であることに改めて気づかされます。

    「3重の文化財活用」を標榜する当館は、「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」のアーティスト達とともに、人の営みによって研磨され継承されてきた姫路城が象徴する美の本質的価値の探求をはじめとして、この地に刻まれた歴史の本質を深く読み解き、姫路全域津々浦々の多様性を明るく照らしていきます。そしてこの営みは、世界文化遺産である姫路城下にある美術館としての根源的使命といえる「人類の知的・精神的連帯」の醸成のために、なくてはならない来るべき美意識の創造に連なるものとなるでしょう。

    一連のプロジェクトが目指す、明日を生きる叡智と希望を汲み上げる創造活動の主役は、世代を超えてこの地に思いを寄せてくださる皆さんご自身です。天空を白鷺が飛ぶ優美な姿に譬えられる世界文化遺産・国宝姫路城に寄り添い凛とたたずむ「赤レンガの美術館」にいつでも気軽にお越しください。


    「姫路市立美術館を中核とした文化観光推進拠点計画」については、文化庁ホームページを参照。

    「人類の知的精神的連帯」は「国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章)」全文より。文部科学省ホームページを参照。

    お問い合わせ

    姫路市役所観光経済局 姫路市立美術館

    住所: 〒670-0012 姫路市本町68番地25 姫路城東側

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