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天体望遠鏡の選び方・望遠鏡を買う前に

自分の望遠鏡を手に入れよう

「天体望遠鏡は星を見る機械」、ということはみなさんが知っていると思いますが、実際に使ってみたことがある、使っている人が近所にいる、という方は少ないと思います。
最初にこのページでは、みなさんが望遠鏡について思っている「あこがれ」を、全部ひっくり返してみたいと思います。

これまでも、「買ったけど使い方が分からない」とか「もう捨てるけど引き取ってもらないか?」「押し入れでカビている」という、かわいそうな望遠鏡をたくさん見てきました。決して安い機械ではありません。厳しいことも書きますが、長く一生付き合える「相棒」となる望遠鏡を買って欲しいと思います。

当館発行の「科学の眼」にもまとめてあります。

何のために買うの?

「1本で万能の天体望遠鏡」はありません!望遠鏡にもいろいろな種類があります。
まずは目的です。みなさんは天体望遠鏡で何をしたいですか?

みなさん、「自動車」を想像してみてください。「エンジンの付いたタイヤが4つある乗り物」ですが、軽自動車からF1カーまで、ものすごくたくさんの種類がありますよね。自動車は使う目的によって、必要な性能が違うからです。

天体望遠鏡も、

  • 土星の環をくっきり見たい望遠鏡
  • ○○星雲が見える望遠鏡
  • 土星の写真を撮るための望遠鏡
  • ○○星雲の写真を撮るための望遠鏡

は「違う望遠鏡」です。「1本の望遠鏡でなんでもOK」にはならないのです。

まずは、「天体望遠鏡でどんなことをしたいのか」をよく考えてみてください。

写真みたいには絶対に見えません

天体望遠鏡は「星を見る道具」ですが、「大きく見る」ためではなくて「明るく見る」ための道具です。

天体望遠鏡を買うと天体写真ギャラリーのような物がすぐ見られる、と思う方が多いのですが、それは「大きな間違い」です。 夜空に見える天体は、どれも地球からとても離れた場所にあります。実は、月や惑星以外のほとんどの星は望遠鏡で見ても「光っている点」なのです。

天体望遠鏡は宇宙の遠くにあって暗くて見えない天体の光を集めて、「明るくして見える」ようにする道具です。 天体写真は、大きく引き伸ばしていたり、長い時間をかけてかすかな光を集めて撮影するので、「○○星雲」や「**銀河」は、人間の目では写真のようには「絶対に見えません」。

でも、写真のようには見えないけど、自分の目で宇宙が見える! という経験は、何事にも替えがたいです。

「倍率」は「おまけ」です

天体望遠鏡は「倍率」ではなくて、レンズや反射鏡の「口径(こうけい)」で性能が決まります。

天体望遠鏡の広告を見ると「最高***倍!」と書いてあったり、観望会の時も「この望遠鏡何倍ですか?」聞かれるが多いのですが、望遠鏡は「倍率で選ぶとがっかりします」
望遠鏡の倍率を変えて大きく見える実感があるのは、月と金星・火星・木星・土星の5個だけです。他の星は何万倍にしても「点」のままなので、「最高***倍!!」を実感できる機会はほとんどありません。

望遠鏡は「明るく見るための道具」ですから、光を集める部品(レンズや反射鏡)の直径=口径が望遠鏡の性能を決めます。口径が大きければ大きいほど、明るく見ることができるわけです。 また口径が大きいほど倍率を上げてもきれいに見えますし、細かいところがクッキリ見えます。一般的には「口径(mm)×1.5~2」がその望遠鏡の実用最大倍率とされています。

口径が4cm=40mmの望遠鏡なら80倍、6cm=60mmでも120倍を超える倍率は、「おまけ」と思ってください。

すぐには使えない!

天体望遠鏡は買ってすぐには使えません。スポーツのように練習がいります。

天体望遠鏡を箱から出して、すぐに見たい星が見られることはまずありません。望遠鏡を通して見える空は、「針の穴の中」くらいの狭さです
夜空の狙った場所に正確に望遠鏡を向けるためには、かなり練習がいります。もちろん「見たい星がどこにあるのか?」という予習も必要です。

最近はコンピューターがついて、自動で星に向けてくれる望遠鏡も多くなってきました。でも、時計を正確に合わせたり、最初の基準の星に向けたりするのは練習がいります。
もちろん、使い終わった後のメンテナンスもいるし、置場もけっこう場所を取ります。

天体望遠鏡は「ペット」と同じで、根気強いお付き合いが必要です。買った次の日に「邪魔者あつかい→押し入れ行き」になる事もあります。

実は大切なのは「のせている台」

天体望遠鏡は望遠鏡の部分よりも、「望遠鏡をのせてある台座(架台)」の方が重要です。

望遠鏡を手で持ってのぞいたことがある人や、望遠レンズで写真を撮る方(ただし手振れ補正はOFF)は、ユラユラ揺れてよく見えない経験はありませんか? たとえば、望遠鏡が100倍の時は持っている手のふるえも100倍になっているので、倍率が高いほど支えるのが難しくなります。

また望遠鏡で見える範囲は、目で見える夜空の星1個分の場所です。見たい星の場所に正確に望遠鏡を向けて支えるためには、しっかりした三脚と望遠鏡を精密に動かせる「架台(かだい)」が必要です。

筒の部分だけでなくて、その下も見てください。しっかりした使いやすい架台じゃないと、見たい星に向けられなくてストレスが溜まります。

望遠鏡を「買わない」という選択も

天体望遠鏡を買わなくても、望遠鏡で星を見る機会はあります。

最近は車を買わないで、カーシェアやレンタカーを借りる、という事もありますね。望遠鏡も自分では持たずに、公開天文台や科学館、ボランティアで開催される観望会に出かけて見せてもらう、という手段もあります。

望遠鏡は車と同じで、買ったら置き場もいるし、定期的なメンテナンスが要ります。もちろん、それなりに維持費も必要です。電子レンジやスマホのように、毎日使う道具ではありませんので、自分では持たずにいる時だけ借りて済ませる、という事も十分に可能です。

身近な天文台や観望会の情報も探してみましょう。

最後は、どれだけお金をかけるか

やっぱり最後は、「どれだけお金を出せますか?」です。

天体望遠鏡は、みなさんが想像する以上の「精密機械」です。ですから、よく見える望遠鏡を作るためにはやっぱりにお金がかかります。使い勝手がよい良く見える望遠鏡は、やはり高いです。

最初に、自動車と望遠鏡は似ているというお話をしましたが、車を買う時も、決まった予算の中で自分の目的に合った物を選びますよね?天体望遠鏡も全く同じです。

望遠鏡のためにいくらまでお金を出せるか、よく考えてください。