火星の見ごろは、約2年毎
前回・2016年の火星の接近からの半年ごとの、地球と火星の場所を絵にしてみました。
地球も火星も、太陽の周りを回っています。地球は1周するのに365日=1年ですが、火星は約687日=約1.9年かかります。
すると、地球が太陽の周りを1周して1年たつと、火星はほぼ半周しているので、太陽の近くにあって見え難くなります。次によく見えるようになるのは、地球がおよそ2周した後・約780日=2年2ヶ月後になります。
大接近と小接近
さて、2年2ヶ月ごとに火星がよく見える時期が来ます。もし、地球と火星が太陽の周りをまわっているコース(軌道)が、どちらもコンパスで描いたような円なら、どこで近づいても同じ距離です。でも、火星の軌道はつぶれた円(楕円)なので、地球の軌道との間隔は場所によって違います。そのため、地球と近づくタイミングによって、同じ「接近」でも2倍近く距離が違います。近い時を「大接近」、遠い時を「小接近」と呼んだりします。
2003年の火星接近は、「5万年ぶりの大接近」などと言われて話題になりました。地球とどれくらい近づくと「大接近」か、という定義はないのですが、6000万kmより近くなる今回の火星の接近は「大接近」と言ってもよいと思います。
図の火星が衝になる日付は、天体位置の計算方法の違いで「7月27日」となっているものもありますが、どちらも間違えではありません。
夜空の中の不思議な動き
衝や最接近の頃の地球と火星は、「追いかけっこ」をしている状態なので、地球から見た火星は、複雑な動きをします。
おおむね、
- 火星に追いつくまで→西から東 (順行)
- 追い越している時→東から西(逆行)
- 追い抜いた後→西から東(順行)
という風に動きます。また、地球と火星の軌道はわずかに傾きが違うので、一直線に往復しないで、少しカーブを描いて見えます
2018年7月下旬の衝から最接近する頃は、東から西の方へ動いています。周りの星と比べると、動いている様子が肉眼でも分かると思います。
火星の見え方ガイド
火星は、夜空には意外と長い期間見えていますが、目立って赤く見えたり、望遠鏡で見ごたえがあるのは、衝や大接近の前後1ヶ月くらいの間です。
火星の大きさは地球の半分くらいなので、望遠鏡で見ても、大接近の時でないとあまり模様は見えません。
肉眼で | 望遠鏡で(低倍率) | 望遠鏡で(高倍率) |
1等星くらいで赤く見える星です | 赤く丸く見えます | わずかに模様が見えます |
火星はどこに見えるの?
火星は必ず決まった時期に、決まった場所に見えます。2018年は「やぎ座」の中ですが、周りに目立つ星はないので、かえって分かりやすいと思います。
惑星は太陽の周りを周っているので、見える時期や場所を計算することができます。ただ、惑星はそれぞれのリズムで動いているので、「夏に必ず火星が見える」という事はなくて、どの時期に見えるのかは毎年違います。また、惑星は空の上の太陽の通り道(黄道)にそって見えます。
惑星がいつ見えるのかは、インターネットで検索をしたり、パソコンのソフトを使うのが便利です。
- 国立天文台暦計算室「今日の星空」:好きな場所の好きな日の、目で見える5惑星の場所がわかります
- アストロアーツ「星空ガイド」:1か月ごとの惑星の見え方が紹介されています
火星が見える方向のめやす
月 | 上旬(1日) | 中旬(10日) | 下旬(20日) | ||||||
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夕方 | 夜中 | 明方 | 夕方 | 夜中 | 明方 | 夕方 | 夜中 | 明方 | |
6月 | 東 | 南 | 東 | 南 | 東 | 南 | |||
7月 | 東 | 南 | 東 | 南 | 東 | 南 | 西 | ||
8月 | 東 | 南 | 西 | 東 | 南 | 西 | 東 | 南 | 西 |
9月 | 東 | 南→西 | 南 | 西 | 南 | 西 | |||
10月 | 南 | 西 | 南 | 西 | 南 | 西 |
火星は肉眼で見えるの?
火星は肉眼で十分見えます。ただし見えても「普通の明るい星」で、大接近だからと言って大きくは見えません。
望遠鏡が発明されるはるかに前から、「うろうろ動く変な星」は注目をされていたので、火星も入れた5大惑星は肉眼で見えます。みなさんがいつも見ている夜空の星のどれかも、惑星の可能性があります。ただ、図鑑の写真のように形や模様は、望遠鏡の助けがないと見えません。
火星は1等星より明るい事があるので、街の中でも見えます。でも、ほかの1等星と見た目の違いは「ちょっと赤い」くらいなので、あらかじめ場所を知っておくと、迷わずに済むと思います。
見るのに道具はいるの?
火星の形や模様を見るためには、天体望遠鏡が必要です。
ただ、望遠鏡があっても、火星の大きさは地球の半分ほどなので、正直に言って小さいです。また、距離の変化が大きいので、衝や最接近から1ヶ月を過ぎると「遠くで光っている電球」のようにしか見えません…
- 意外と小さい望遠鏡でも、しっかりピントを合わせると、形が見えます
- しっかりきれいに見えるためには、それなりにしっかり(特に望遠鏡を支える台)した望遠鏡が要ります
- 天候(特に空の高い場所の風)によって、惑星の見え方はかなり違います
- あわてて望遠鏡を買うよりも、科学館や公開天文台の観望会に出かけて、大きな望遠鏡で見ることもできます(→「PAONAVI」というページで観望会の情報を検索できます)
火星はどれくらいの大きさで見えるの?
地球と火星が一番近づく時「最接近」のタイミングは、軌道の場所によって違います。おおむね、太陽-地球-火星が一直線にならぶ「衝(しょう)」の時がですが、前後することがあります。2018年は、衝が7月28日、最接近は7月31日です。
きっとニュースでは「火星が7月31日×時×分に最接近!」という言われ方をすると思いますが、正直に言ってあまり意味はありません。大接近の瞬間だけが特別大きく見えるわけでなくて、前後1ヶ月くらいはほぼ同じように見えますので、あわてずに何度も見て、変化を楽しむとよいと思います。
他に気をつけることは?
大原則として、天気が悪いと見られません。くもりや雨の日は、きっぱり諦めてください。
- 望遠鏡より「虫よけスプレー」や「冷えないための上着」の方が大切です。
- 「修行」ではありませんので、つまらなくなったら即撤退です。ぜひ楽しくご覧ください。
- もちろん、安全第一です。子どもだけで出かけたり、車の多いところや治安のよくない場所はさけてください。
- 夜間ですから、周りへの迷惑にも十分気を払ってください。
- くもりや雨の日は見えません自由研究や旅行の目的にする時には、見えなくても楽しめるメニューも考えてください。
関連イベント
ミニ展示「火星大接近!宮本正太郎とスケッチ観測のススメ」
姫路ゆかりの天文学者、宮本正太郎京大名誉教授と火星のスケッチ観測の魅力を紹介しています。詳しくは特集のページへ。
- 日時:6月1日(金)~9月3日(月)
- 場所:姫路科学館4階 常設展示室
- ご覧頂くには、常設展示観覧券(大人500円、小中高校生200円)が必要です
自由参加の科学教室「折り紙火星儀を作ろう」
GW中に、会場に展示されている「宮本正太郎手書きの火星儀」と「火星探査機撮影した火星の写真」を元に、折り紙の技法を使った工作をしました。夏休みの火星大接近に向けて、また工作会を開催する予定です。
参考資料:「折る幾何学」(日本評論社) 前川淳 著
参考資料
- 国立天文台暦計算室
- アストロアーツ「火星大接近」
- 天文年鑑2018
- ステラナビゲーターver.10