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《 姫路発 》お城からの手紙

2022 Summer vol.88

知られざる姫路の絶景04 家島町 島のヒメボタル 5月下旬から6月にかけて、森の中や海岸を幻想的に彩る光。初夏の家島は森のホタル、海のホタルを同時に観賞できる珍しいスポットです。

海に浮かぶ島々、森のホタル、海のホタル… 絶景を巡る島散歩

 40余りの島々からなるといわれる家島諸島の中心、家島本島。その東の岬、天神鼻に鎮座する家島神社は、神武天皇が即位前に祈願されたともいわれ、平安時代に編さんされた『延喜式』神名帳にその名を残す由緒ある神社です。

 家島神社までは、宮港から海沿いを歩いて約20分。途中、太宰府に向かう菅原道真が詩を読んだと伝えられる「詩ヲ書キ場」もあります。さらに進むと海際にある大きな鳥居が見えてきます。岬の先端にあるので、普段はとても静か。波の打ち寄せる音、鳥のさえずり、遠くに聞こえる船の音……。のんびりとした時間が流れています。

 ここから鳥居をくぐり、170段の階段を上って本殿へ。周囲は「天満霊樹(てんまれいじゅ)」と呼ばれる原生林で、ウバメガシ、シイ、トベラなどが生い茂っています。天神の森ともいい、瀬戸内海国立公園に指定される場所。古来より伐採されることなく、昔のままの姿で残っている森は、どことなく神秘的な雰囲気に包まれています。

 この森を中心に、5月下旬から6月中旬に明滅しながら飛び交うのがヒメボタルです。その大きさはゲンジボタルよりもひとまわり小さく6~9ミリほど。黄色い色が強く、明滅時間が短いため、フラッシュのようにチカチカと光ります。日本固有種ですが、幼虫のときから陸で生息しているため、人目につきにくく一般的にはそれほど知られていません。家島でも、その生息が認識されるようになったのは数年ほど前なのだとか。兵庫県ではレッドデータの要注目種に指定される希少種ですが、この時期、家島神社から清水公園に向かう遊歩道では100匹以上のヒメボタルが飛び交い、幻想的な景色を生み出します。

 また、梅雨前からウミホタルやヤコウチュウも発生し、海岸を青白い光で彩ります。見分けがつきにくいですが、砂を投げるなど刺激を与えると光が増すのがヤコウチュウ。比較的強い光で消えないのがウミホタルです。海のホタルと森のホタルが同時に見られる観賞ツアーもあり、人気を集めています。

 家島神社の遊歩道を抜けると清水公園があります。その眺望の良さから、江戸幕府が海上警備のために見張所を設けた場所で、「監館眺望」と呼ばれる家島十景の一つでもあり、今も港を見下ろす素晴らしい景色を楽しむことができます。そして、緑地化された岬の反対側からは、瀬戸内ならではの多島美を拝めます。ノリの養殖場や通り過ぎる船の航跡を眺めていると、過ぎ行く時間を忘れてしまいそうですよ。

❶ヒメボタル/家島神社の鎮守の森を中心に、無数の光を放つ森のホタル❷ヤコウチュウ/ゆらゆらと青白く光る海洋性のプランクトン。刺激を受けると光を放ちます❸海の青、空の青に白い鳥居が映える美しい風景❹❺石灯籠が並ぶ参道は清浄な空気にあふれ、思わず深呼吸したくなる心地よさです

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家島町宮地区(写真❶)

家島諸島のあれこれ 瀬戸内の多島美を堪能する

 家島諸島には大小さまざまな島がありますが、人が住んでいるのは家島、坊勢島、男鹿島、西島の4島です。姫路港から家島(真浦港・宮港)、姫路港から男鹿島・坊勢島を結ぶ2航路の定期船が出ています。また、家島から坊勢島へ向かう定期船も出ており、家島と坊勢島が観光の中心地となっています。島内には路線バスやタクシーはないのでご注意を。家島本島や坊勢島ではコミュニティバスやレンタサイクルなどが利用できます。詳しくは姫路市や家島観光事業組合のホームページをご覧ください。

  • 家島(IESHIMA) 家島諸島の中心となる島。古くから漁業や海運業が盛んで、港には大小さまざまな船がたくさん並び、活気にあふれています。急斜面に並び立つ家が特徴的。入り組んだ迷路のような路地裏を散歩するのも楽しい。新鮮な魚が食べられる食事処もあります。
  • 西島(NISHIJIMA) 家島諸島の中で最も大きな面積を誇る島。兵庫県立いえしま自然体験センター(旧母と子の島)があり、カヌーやカヤックなどの海洋スポーツの体験プログラムが用意され、毎年たくさんの人が訪れます。
  • 男鹿島(TANGAJIMA) 播磨国の飾磨の雄鹿と雌鹿のうち、雄の鹿が海を泳いで渡ったことからその名がついたといわれます。採石の島として知られ、地肌がむき出しの独特の景観を生み出しています。夏場には民宿が営業し、海水浴客や釣り人などが訪れます。
  • 坊勢島(BOUZEJIMA) 坊勢島は漁師の島。港には豪華絢爛(けんらん)な紋が彫られた漁船がずらりと並びます。その総漁船数は900隻ともいわれ、兵庫県下で1、2を争うほどの漁獲高を誇ります。島の周囲は約11㎞。歩いて回ることもできる大きさ。釣り人も多く訪れるそうです。

広報推進員「個性豊かな島々です」

瀬戸内のおだやかな海に囲まれた家島諸島の写真 家島諸島の地図 姫路から出ている高速フェリー、家島諸島近海で夏に釣れる魚のイラスト
心の込もったおもてなし
❶一般的なしらす丼の3〜4倍の量をぜいたくに。ふわふわのしらすが絶品です❷白身は家島の塩でいただく海鮮丼❸いえしまコンシェルジュの中西さん(右)とシェフの立道貴士さん
地図の1番カフェスコット家島
いえしまコンシェルジュとして活躍する中西和也さんが運営するカフェ。真浦港を一望できる場所にあり、船を待つ間や路地裏散策のひと休みなどに利用できるコミュニティスペースです。昨年から魚好きのシェフが加わり、新たなメニューも登場。驚くほどしらすが盛られた「大盛りしらすのこぼれ丼(2,000円)」や島の魚屋さんで仕入れた朝締めの魚を使った「旬の海鮮丼(1,280円)」など、気軽に家島の新鮮な魚をいただけます。

いえしまコンシェルジュの活動はこちらから

坊勢ならではの出汁! チャーシュー2枚・青ネギ・もやし・メンマが載った坊勢ラーメン
地図の2番らーめんうぉんちゅ坊勢島
ガンゾウヒラメ(家島ではガンドガレイと呼ばれる)を干した家島名物「干ガレイ」で出汁をとった「坊勢ラーメン(700円)」。ラーメン好きの店主が地元の味をもっと知ってもらおうと始めたもので、干ガレイの風味とうま味が存分に感じられる個性豊かな魚介系スープの味わいは、ラーメン好きにも評価されています。船着場近くにあるので、利用しやすいのも◎。

カンゾウヒラメのイラストと波

坊勢島の奈座港のそばにある小島には、漁師の守護神でもある海神・龍神が祭られたお社があります。赤い欄干と海と空のコントラストがとても印象的。毎年1月には「海神祭」が行われます。また、漁師の父を助けるために身投げした孝行娘の伝説が残されています。

赤い欄干が絵になる

欄干から海を眺める広報推進員

家島のまちなみ

家島は平地が少なく、家が密集しているため、どこか懐かしい雰囲気の細い路地がたくさんあります。昔ながらの蔵や今では使われなくなった井戸、不思議な置物や小さな公園、猫のたまり場など、小さな発見を楽しみながら歩くだけでなんだかとても楽しい。今では見掛けることも少なくなった魚屋や文具店、自動販売機などもチェックして。