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《 姫路発 》お城からの手紙

2023 Winter vol.94

姫路城 世界遺産登録30周年 かけがえのない文化財を後世に伝えるために
令和5(2023)年3月からスタートした「彩雲(さいうん)ライトアップ」。(毎日午後8時、午後9時からそれぞれ15分間)
大天守の上部は白色で姫路城の純白のイメージを守りつつ、天守群の下部は姫路の自然や文化、花木をイメージしたカラーでたなびく雲のような穏やかな動きとともに照らし上げる。
照明デザイン(株)石井幹子デザイン事務所

姫路城が世界遺産に登録された理由
お城

姫路城が法隆寺地域の仏教建造物と共に我が国で初めて世界遺産に登録されたのは今から30年前、平成5(1993)年12月、南米コロンビアで開催されたユネスコの第17回世界遺産委員会でのことでした。
登録の理由は、姫路城の美的完成度が我が国の木造建築の最高の位置にあり、世界的にも他に類のない優れたものであること。また、17世紀初頭の城郭建築の最盛期に建造された天守群を中心に、櫓(やぐら)、門、土塀等の建造物や石垣、堀などの土木建築物が良好に保存され、防御に工夫した日本独自の城郭の構造を最もよく示した城であることなどが評価されました。
同時に、世界遺産に認定されるためには、伝えられている文化財が本物であることが必要でした。再建・修復された場合でも、当時と同じような材料を使い、伝統的な技術により、同じ意匠で継承されていることが求められます。これまで姫路城は、先人たちのたゆまぬ努力により、総体的に真正性が維持されてきました。数百もあった近世城郭が明治、大正、昭和という激動の時代を通して姿を消す中、姫路城が変わらぬ姿であり続けたことは、奇跡的だと言えるでしょう。

危機を乗り越えた姫路城

明治6(1873)年、明治政府が公布したいわゆる廃城令により、全国のお城の多くが姿を消しました。存城とされた姫路城も、旧陸軍省の管轄となり、広大な敷地を確保するために三の丸にあった御殿は撤去。天守群は封建時代の遺物として放置されました。当時の天守は屋根に雑草が生い茂り、瓦は落ち、壁も崩れるなど、悲惨なありさまでした。しかし、次第に城への文化的な価値に目が向けられるようになると、姫路城を救おうという市民運動が盛り上がりを見せ、明治末期には旧陸軍省による本格的な保存工事が行われました。
また、昭和3(1928)年に史跡指定、昭和6(1931)年に旧国宝に指定されたこともあり、昭和9(1934)年に国の直轄事業として本格的な保存工事が展開されます。太平洋戦争で一時中断されたものの、「昭和の大修理」は約30年にわたって行われました。修理といっても巨大な大天守を解体し、復元するのは、一から築城するのに等しい大工事。このとき、伝統的な技術・手法を取り入れたこと、また19世紀以降に増築された部分を撤去したことが、世界的な遺産と評価され得る適切な復元につながったと言えます。

世界遺産登録後の姫路城

さて、世界遺産としてその価値を認められた姫路城ですが、世界遺産に登録されると、今度は遺産の確実な保存・管理、そして適切な活用が求められるようになりました。
平成21(2009)年度から約5年かけて行われた姫路城大天守保存修理事業では、屋根の葺(ふ)き替えや壁面修理に加え、耐震性向上のため構造補強が行われました。この他にも、実は、姫路城では毎年どこかが修理されています。というのも、国宝8棟のほか74棟もの国の重要文化財があるため、毎年2〜4棟ずつ約30年のサイクルで修理しながら、伝統の技法や材料も守っているのです。
また、観光資源としての活用についても、世界遺産にふさわしいかどうかがユネスコ世界遺産委員会から厳しくチェックされています。その価値を守り、さらに磨いていくために、姫路市ではさまざまな取り組みを行っています。
たとえば令和5(2023)年には、二酸化炭素の排出量を削減するため、夜間のライトアップをLEDにリニューアル。世界的照明デザイナーである石井幹子さんの設計・監修の下、姫路城の白漆喰(しっくい)がより美しく多彩に彩られるようになりました。また、インバウンド対応として、パンフレットの多言語化や音声ガイドの導入も進んでいます。来年3月までは、世界遺産登録30周年記念事業を展開中。世界に誇る姫路城の魅力を国内外にアピールしています。
明治時代の姫路城大天守
明治時代の姫路城大天守。
廃屋のように荒れ果てて傷みが激しい。
姫路市立城郭研究室所蔵
昭和の大修理
昭和の大修理。大天守に素屋根を架けて解体・修理を行った。
姫路市立城郭研究室所蔵
天空の白鷺
姫路城大天守保存修理事業では、素屋根の中から保存修理の現場や匠(たくみ)の技を間近で見学できる「天空の白鷺(しらさぎ)」を導入。
世界遺産登録30周年記念事業も
クライマックスへ!
【知る】
姫路城を保存継承していくために私たちがまず
その価値を知ることが大切です。
西小天守

( 本邦初公開の西小天守へ! )

姫路城は、大天守に対して乾(いぬい)小天守と東小天守、西小天守が並立して立ち、渡櫓(わたりやぐら)でロの字型につながれた連立式天守です。
今回、世界遺産登録30周年を記念して、西小天守の内部が初めて公開されます。西小天守は、格子の付いた二つの火灯窓がある地上3階、地下2階建ての建物。ニの渡櫓で大天守、ハの渡櫓で乾小天守とつながっています。乾小天守は大天守と対角の位置にあり、三つの小天守の中で一番大きく優美な見た目で、西小天守の窓からはその様子がよく見えます。また、ニの渡櫓の1階に水の五門、西小天守の1階に水の六門が付属し、大天守を守る最後のとりでとなっています。ぜひ水の五門から上を見上げてみてください。ちなみに、西小天守の地階にはトイレへの出入り口があるんですよ。
姫路城 冬の特別公開
日程/令和6(2024)年2月1日(木)〜29日(木)
場所/姫路城 有料
問い合わせ/姫路城管理事務所
電話/079-285-1146

( 世界遺産登録の意義を問い直す )

姫路城が世界遺産に登録された12月にシンポジウムを開催します。基調講演ではNPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員の宮澤光さんが「姫路城の世界遺産登録が日本にもたらした影響とは何か」をテーマにお話しします。その後、清元秀泰姫路市長や世界遺産検定1級合格者でもある俳優・宮崎美子さんらをパネリストに迎え、世界遺産の未来と課題についてのパネルディスカッションも行われます。 姫路城に関わるさまざまな活動を通して、保存と継承に貢献した個人や団体に対して贈呈される「姫路お城大賞」の表彰式も同時開催。
宮澤 光
宮澤 光
NPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院国際広報メディア研究科博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。國學院大学北海道短期大学部兼任講師を経て、2008年から現職。
世界遺産シンポジウム
日程/12月3日(日)
場所/アクリエひめじ中ホール
問い合わせ/姫路市文化財課
電話/079-221-2786
URL/https://himeji-symposium.com/
※10月1日から一般参加者の募集開始
もっと
学ぼう!
埋蔵文化財から学ぼう
姫路城世界遺産登録  30周年記念展「姫路城」
縄張(なわばり)・普請(ふしん)・作事(さくじ)・城下町をテーマに、姫路城の最新の調査研究の成果を分かりやすく紹介します。
日程/令和6(2024)年
   3月31日(日)まで
場所・問い合わせ/姫路市埋蔵文化財センター
電話/079-252-3950
埋蔵文化財
書籍から学ぼう
姫路のお城とお殿さん
姫路城や藩主に関する希少な本をホールで展示します。
日程/12月27日(水)まで
場所・問い合わせ/姫路市立城内図書館
電話/079-289-4888
【楽しむ】
冬の姫路城を彩るイルミネーションや謎解きイベントの開催も。

( 水面に映る幻想的な姫路城を観賞 )

世界遺産登録30周年プレイベントとして開催された「鏡花水月」の様子
昨年世界遺産登録30周年プレイベントとして開催された「鏡花水月」の様子。
今年は昨年の倍のレーザーサーチライトを照射
今年は昨年の倍のレーザーサーチライトを照射(イメージ)
昨年人気を集めたライトアップイベントがパワーアップしました。かつて三の丸広場に存在していたとされる向屋敷庭園の水辺を連想させる巨大な水鏡を設置し、「逆さ姫路城」の美しい姿を堪能できます。
今年は小型の四つの箱型の水盤台も設置。プロジェクションマッピングのデジタルアートも展開されますよ。姫路城の広大な空間をぜいたくに使った幻想的な世界は、SNS映えすること間違いなし。
夜ならではの仕掛けとして、影絵を楽しめる記念撮影スポットも。ぜひ、ユニークなポーズで写真を撮ってみてください。
姫路城Castle History 30th 鏡花水月
日時/11月22日(水)〜12月11日(月)
   午後5時45分〜午後9時15分
場所/姫路城三の丸広場 有料
問い合わせ/姫路市観光課
電話/079-221-1500
URL/https://himeji-kyoukasuigetsu.com/

( 大手前通りもお祝いムードに )

大手前通りイルミネーション
大手前通りイルミネーション©石井幹子デザイン事務所
世界遺産登録30周年を記念し、今年初めて行われるのが大手前通りなどのイルミネーション。姫路城の「彩雲ライトアップ」も手掛けた世界的照明デザイナー・石井幹子さんの監修で、姫路駅から姫路城前交差点までの沿道樹木やモニュメントにLED照明を取り付け、姫路城のライトアップと連動した一体感のある演出を堪能できます。また、姫路駅北にぎわい交流広場(芝生広場)もイルミネーションで飾られるなど、冬の姫路駅前が華やかに来訪者をおもてなしします。
大手前通り・姫路駅北にぎわい交流広場(芝生広場)イルミネーション
日時/11月22日(水)〜令和6(2024)年2月29日(木) 日の入り〜午後10時(予定)
場所/大手前通り・姫路駅北にぎわい交流広場(芝生広場)
問い合わせ/姫路市産業振興課
電話/079-221-2522

( 姫路城で謎解きイベント?! )

パソコンやタブレット、スマートフォンなどのインターネットにつながる環境があれば挑戦できる、謎解きイベントを開催しています。
姫路城の中を探検しながら、姫路城にちなんだ歴史上の人物が出す謎を解いていきます。
ポイントは360度カメラを使った臨場感抜群のVR映像。お城の中を歩くのが大変な方や海外の方をはじめとする遠方の方にも、姫路城を体感いただけるようになっています。VR機器を使わなくてもお楽しみいただけます。
姫路城と伝説の秘宝
姫路城VR謎解きイベント 姫路城と伝説の秘宝
日程/令和6(2024)年
   3月8日(金)まで
問い合わせ/姫路市観光課
電話/079-221-2121
URL/https://www.city.himeji.lg.jp/kanko/0000025131.html