姫路城への道しるべ 第1章 姫路城の基礎を学ぶために―姫路城の参考文献案内―
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第1章 姫路城の基礎を学ぶために―姫路城の参考文献案内―
はじめに
「姫路城について調べたい」という人が城郭研究室を訪れます。とくに、夏休みの宿題などで調べたいという学生さんも少なくありません。そこで、姫路城に関する基礎的な知識を学ぶための資料を「道しるべ」として紹介してみたいと思います。この「道しるべ」では、橋本政次『姫路城の話』(神戸新聞総合出版センター発売、1993年)を基礎テキストとして挙げておきます。これを標準として、参考になる資料を順次紹介していきます。
まず第1章では、『姫路城の話』のほかに、準備運動として姫路城の総合的な文献を紹介します。ここで紹介した本は、城郭研究室の閲覧室で利用することができます(一部閲覧できないものもあります)。また、城郭の特徴や基礎用語については、三浦正幸『城のつくり方図典』(小学館、2005年)が便利で、入手しやすいです。
何から手をつけたらいいかわからない人は
橋本政次『姫路城の話』は「なぜ白鷺城というのか」「抜穴はあるか」「千姫はどこに住んだか」など、質問への回答形式で書かれた姫路城の一般的な案内書です。また、初心者向きの入門書としては、カラー写真と分かりやすい解説の『姫路-お城物語』(姫路市教育委員会)があります。ただ残念なのは、『姫路-お城物語』は姫路市内の小学校4年生の副読本で、一般には販売されていません。図書館や城郭研究室にて閲覧してください。どうしても初心者向きの本が欲しいという方は、『姫路城の基礎知識』(城郭研究室、2009年)があります。
その他、見どころとともに伝説なども取り上げ、折込みの姫路城復元イラストが付いた『歴史街道スペシャル 名城を歩く1』(PHP、2002年)や、千姫や池田輝政など人物中心にまとめた『週刊名城をゆく2』(小学館、2004)、CGによる復元イラストを使用し、昭和の大修理の成果について西村吉一氏の解説がある『歴史群像シリーズ[よみがえる日本の城]4』(学研、2004年)などで、「姫路城」がそれぞれ特集されています。
昭和の大修理といえば、神戸新聞の連載をまとめた『検証 姫路城-匠たちの遺産』(神戸新聞総合出版センター、1995年)が、関係者の証言をまじえて大修理を追跡しています。ほかに、かつて大修理工事に従事した西村吉一氏が修理をふりかえった文化財見学シリーズ50から52まで『姫路城・昭和の修理をふりかえる1、2、3』(姫路市教育委員会文化課、2003年)も必読でしょう。
少し興味が深まってきた人は
『歴史群像名城シリーズ 姫路城』(学研、2000年)や『日本名城集成 姫路城』(小学館、1984年)へ進みましょう。『日本名城集成 姫路城』には、城下町の歴史や建物について詳しい説明もあります。城下町については、『掘り出された城下町・姫路』(兵庫県立歴史博物館、1985年)も発掘成果を中心にまとめて参考になります。
『姫路市史』第11巻下史料編近世3付図(姫路市、1999年)に収録されている「姫路城下町絵図」は、城下の町人が所持していた絵図で、姫路町の情報が書き込まれている珍しい史料です。
さらに、詳しく調べる人には
『姫路市史』第14巻別編姫路城(姫路市、1988年)を見てください。城の歴史・縄張・建築・城下町・昭和の大修理・文学・瓦・石垣・植物の各分野について詳しい説明があります。特に歴史では、それまで通説であった南北朝時代の赤松氏築城説を否定して戦国時代の黒田氏築城説などの新説を打ち出したり、明治時代に姫路城が23円50銭で売りに出された話の真相を追求したりと、発行当時には新聞などでも話題となりました。
また、橋本政次『姫路城史』上・中・下巻(名著出版復刻、1973年)では、歴代城主ごとの詳しい歴史が描かれています。昭和27年(1952年)初版ですので現在の研究成果からみて古くなった部分もありますが、史料を網羅しており姫路城研究の最高水準の成果といえるでしょう。
建造物については、加藤得二『日本城郭史研究叢書9 姫路城の建築と構造』(名著出版、1981年)が詳しい。加藤氏は昭和の大修理の工事主任だっただけに、その成果をふまえた新知見も盛り込まれて注目されます。
姫路城の絵図については、『姫路市史』の付図のほか『姫路城絵図展-雄藩姫路の城下と城郭』(城郭研究室、1998年、品切)が注目です。ここには、姫路城の絵図がほぼ網羅されており、図面ごとの解説も充実しています。御殿の部屋割りまで描かれた中根家の「播州姫路城図」は、拡大写真もあり、御殿についての報告では参考になるでしょう。
次に、本格的な研究を始める方は
オリジナルの史料や報告書から自分のテーマに必要なデータを取り出してみましょう。建築に関しては『国宝重要文化財 姫路城保存修理工事報告書1、2、3』(文化財保護委員会、1965年)に、昭和の大修理の基本データや写真が収録されています。石垣の修理工事については、『特別史跡姫路城跡石垣修理工事報告書』(姫路市)が(8)まで出ました。城と城下町の発掘については、『日女道かがみ』(日本城郭研究センター、1994年、非売品)に1991年度までの一覧があり、それ以後の成果は『城郭研究室年報』(城郭研究室)に概要報告があります。
また、文献史料については、さきの『姫路市史』第14巻や『姫路市史』の史料編、『姫路城史』に主なものが収録されていますし、『城郭研究室年報』では酒井家文書「玄武日記」(藩主酒井忠以の日記)の翻刻も進んでいます。
まだまだありますが、とりあえず主な参考文献を示してみました。もちろん、これら全てに目を通すことは大変ですので、図書館か城郭研究室で一度閲覧してみて、自分にあった物から読み始めてはいかがでしょうか。
参考
- 橋本政次『姫路城の話』は、品切の可能性あり。
- 『城郭研究室年報』(Vol.1から3、5、9、13は品切、他は各1,000円)は、城郭研究室にて販売中。
- 『姫路市史』第14巻は、姫路市役所1階の市政情報センターか日本城郭研究センター内の図書館史料整理室で5,500円にて販売中。
- 文化財見学シリーズ50から52まで『姫路城・昭和の修理をふりかえる1、2、3』は、姫路市役所北別館4階の文化財課で無料配布中です。
- この文化財見学シリーズは、姫路市のwebサイトのトップページ、「文化財・歴史」の中の「刊行物・資料」で既刊分はすべてPDF公開しています。
- 『検証姫路城』(1325円税込)、『日本城郭史研究叢書9 姫路城の建築と構造』(5040円)、『姫路城史』(上中下巻セット38850円税込)は書店で購入できますが、品切の場合あり。
その他の本も購入を希望される方は書店にお問い合わせてみてください。
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