市長所信表明(令和7年度)
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令和7年第1回市議会定例会の冒頭において、市長が市政運営に当たっての基本方針を説明しました。


はじめに
令和7年度予算案並びにこれに関する諸議案のご審議をお願いするに当たり、市政の基本方針と施策の大要を申し上げ、姫路市民の皆さま並びに議員各位のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
私はこれまで、市民の皆さまの「命」をたいせつにする、「くらし」を豊かにする、「一生」に寄り添うことを自らの使命として、市政運営を行ってまいりました。
「市民の皆さまが誇りや愛着を持ち、いつまでも住み続けたいと思っていただけるまちをつくりたい」、そして、「先人が築いてきた姫路のまちを、より豊かなものとし、未来へと引き継いでいきたい」、就任以来、日々強くなる想いを胸に、全力で職務にまい進しているところでございます。
昨年は、こども医療費の完全無償化を実施するとともに、市立学校体育館への空調整備や、市立高等学校の再編に着手するなど、姫路の未来の担い手を育むための環境整備に取り組みました。
さらに、姫路でくらす全ての「ひと」が、いつまでも健康でいきいきと毎日を過ごすことができるよう、フレイル予防や通いの場の充実など、健康長寿のまちを目指し、積極的に施策を展開いたしました。
また、「ふるさと・ひめじ」が有する多彩な魅力を活かしながら、にぎわいと活力あふれるまちづくりを推し進めたことで、令和5年度の姫路城の入城者数は147万9千人を記録し、特に外国人入城者数は初めて45万人を超えるなど、国内外から多くの観光客にお越しいただきました。
2回目の開催となった「Himeji大手前通りイルミネーション」は、大手前公園や家老屋敷跡公園にも開催エリアを拡大したほか、25万球のLED装飾を用い、姫路城の彩雲ライトアップと連動した演出を行うことで、夜のまちなかを華やかに彩りました。
さらに、LEDナイター照明の設置などリニューアル工事が完了したウインク球場は、より魅力あふれる球場へと生まれ変わり、「プロ野球フレッシュオールスターゲーム2024」や「手柄山オータムジャンボリー」といった記念事業を開催いたしました。
一方で、人口減少や長引く物価高騰など、本市は多くの課題に直面しています。
特に、人口減少は、地域経済の規模縮小や、地域コミュニティの活力低下など、深刻な影響をもたらすものであり、本市にとって最大の課題です。
長らく53万人都市と謳われた本市の人口は、昨年6月に52万人を割り込みました。2050年には2023年より約9万人減少すると予測されるなか、人口増加に転じることは困難な状況にあります。
こうした中、人口減少に対応し、市政のメインテーマである、市民の皆さまのLIFE、「命」「くらし」「一生」を守り支えるとともに、「活力」ある姫路を創造するためには、次の3つのポイントを念頭に置きながら、施策を展開することが重要であります。
1つ目は、姫路の未来を切り拓く「ひと」を育むことです。これまで経験したことのない人口減少の時代に対応するためには、まちを変革し、新たな活気をもたらす「ひと」の育成が欠かせません。
2つ目は、国内外から選ばれる「まち」を築くことです。地域経済の好循環により持続的に発展するまち・ひめじを実現するためには、若者や外国人、企業を惹きつけ、選ばれる「まち」になることが重要です。
3つ目は、時代の変化に対応し「しくみ」を変えることです。社会構造の目まぐるしい変化にしなやかに対応するためには、デジタル技術の活用などにより、社会全体で生産性の向上に取り組みながら、新たな価値を創出することができる社会システムに転換していかなければなりません。
こうした想いのもと、今の姫路に必要なことを徹底的に考え、令和7年度予算を編成いたしました。
各会計予算は、
一般会計 2,582億円
特別会計(7会計) 1,128億円
企業会計(2会計) 587億円
総額 4,297億円
となっております。
以下、令和7年度の主要な事業について、順次ご説明申し上げます。

LIFEに関わる4つのメインテーマ

「活力」ある姫路を創造する市政
メインテーマの第1は、「活力」ある姫路を創造する市政であります。
社会の不確実性が高まる中にあっても時代の変化に対応し、「活力」あふれる姫路を築き上げるため、「ひとづくり」「デジタル」「グリーン」「まちづくり」の4つの「改革」に果断に取り組んでまいります。

未来を拓く「ひとづくり改革」
1つ目は、未来を拓く「ひとづくり改革」であります。
少子化が進み、現役世代の減少が続く現代において、子育て世代が、安心して子どもを産み育てることができるよう、子どもたちの成長を支え、喜びを共感できる社会を構築するとともに、姫路でくらす全ての「ひと」への投資を積極的に行うことで、まちの担い手の育成・確保を推進してまいります。
また、将来の予測が困難な時代において、次代を担う子どもたちに多様な学びを提供するとともに、誰一人取り残されない教育環境の構築に取り組むなど、子どもたちの「生きる力」を育んでまいります。
出会いから結婚、妊娠・出産期の支援については、学生や社会人に自身のライフプランを考えるきっかけを提供するほか、新たな出会いの形として定着しつつあるマッチングアプリや、伴走型の出会い支援を行う結婚相談所の利用料金を助成します。
また、若い世代が自身のライフプランや健康に向き合うプレコンセプションケアに取り組む環境を整えるため、将来の妊娠・出産を希望する女性に、卵子の凍結保存に係る費用を助成します。
さらに、子育て応援アプリ「ひめっこ手帳」を活用し、健診時における問診票のほか、小児予防接種に係るスケジュールや接種記録など、健康記録のデジタル化を推進します。
加えて、新たな命の誕生を祝福するため、保健師が乳児のいる全ての家庭を訪問し、母子の健康保持や育児支援を行う機会を活用して、おむつ等育児用品のギフトカードを配布します。
健やかな成長を支える子育て環境の整備については、教育・保育施設で働く保育士等への処遇改善に取り組むほか、就労要件を問わず柔軟に保育所等を利用できる「こども誰でも通園制度」の本格実施に向け、公立施設に加え、私立施設でも同制度を利用できるよう、モデル事業の対象施設を拡大します。
また、こどもの未来健康支援センター「みらいえ」では、子どもの発達に不安を抱える保護者の相談支援体制の充実を図るほか、遊び場「のびのび広場みらいえ」について、これまでの平日に加え、土曜日を開設日といたします。
さらに、育児支援希望者と提供者のマッチングを行うファミリーサポートセンター事業の利便性向上を図るため、会員登録等のデジタル化や預かり場所の拡大を行うほか、安心して子育てができる環境を整備するため、病児保育施設の開設支援に取り組んでまいります。
加えて、放課後児童クラブの運営体制の充実を図るため、民間事業者への運営委託を段階的に進めるとともに、子どもや若者の意見を本市の施策に反映させるため、「(仮称)姫路市こども・若者会議」を開催いたします。
より良い教育環境の整備については、次代を担う子どもたちの豊かな心や多彩な能力を育むため、小・中・高等学校を一気通貫する「姫路型」探究学習カリキュラムの開発や、クラウドファンディングを活用し、空き教室を子どもたちがいきいきと活動できる空間へリノベーションする「子どもの学校改革応援事業」に取り組むほか、ICTを活用した学習プラットフォームの充実を図るとともに、子どもたちが発するSOSを早期に発見し、きめ細かな支援につなげるため、1人1台端末を活用した心の健康観察を実施いたします。
また、誰一人取り残されない教育を推進するため、不登校児童生徒支援員やスクールソーシャルワーカー、バイリンガル支援員による支援をさらに充実させるほか、いじめの早期発見と適切な初期対応を行うため、新たに「いじめ相談窓口」を設置します。
さらに、不登校の子どもが、学習支援や教育相談、体験活動などを行っている民間のフリースクール等に通う際の利用費用を助成します。
併せて、少子化が進む中においても、子どもたちが将来にわたって多様なスポーツ・文化芸術活動に親しむことができる機会を確保していくため、中学校部活動の地域展開を推進する地域クラブ活動「姫カツ」の実証事業を拡大するほか、新たな校務システムの導入や、スクール・サポート・スタッフの配置により、教職員の働き方改革を進め、教職員が子どもたちと向き合う時間を創出します。
また、新たな市立学校である「(仮称)姫路市(し)立(りつ)高等学校」の令和8年4月の開校に向け、新設校にふさわしい魅力あるカリキュラムの編成や現市立3校の一体感の醸成に取り組むとともに、旧中央卸売市場跡地における新校舎建設に向け、用地取得を推進します。
さらに、子どもたちの教育環境の改善と安全確保を図るため、市立学校園における保守、点検、修繕等について、令和8年度からの包括的な管理業務委託の導入に取り組むとともに、全ての市立学校体育館への空調整備を引き続き進めてまいります。
併せて、ふるさとを愛する心を醸成するため、「世界遺産学習全国サミットinひめじ」や、埋蔵文化財センター開館20周年を記念した企画展を開催いたします。
また、本年は戦後80年を迎えます。この節目の年に、「二度と戦争はおこさない」という太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔を建立した先人の強い思いを受け継ぎ、戦争の記憶や平和のたいせつさを後世に伝えていくとともに、平和を祈念する心を世界に発信するため、令和7年4月より手柄山中央公園の名称を「手柄山平和公園」に変更いたします。

生活の質を高める「デジタル改革」
2つ目は、生活の質を高める「デジタル改革」であります。
社会の幅広い分野において担い手が不足し、人材や財源などのリソースが限られていく中においても、省力化・省人化を図りながら、より質の高いサービスを生み出すことができる施策を展開してまいります。
デジタル技術を活用した市民サービスの向上については、官民データの連携による切れ目のない子育て支援サービスの創出など、姫路版スマートシティの実現に向けた取組を推進するとともに、一人ひとりに応じた子育てや教育に関する情報等をスマートフォンアプリ経由で提供する電子通知サービスの利便性向上に取り組みます。
また、本市のポイント付与事業を拡充し、健康づくりへの市民参加等を促進するほか、LINE公式アカウントで配信する情報やオンラインで申請可能な行政手続の対象などを拡充します。
さらに、市役所では、さまざまなデータを収集・分析し、合理的根拠に基づく政策を立案する人材や、DXを推進する人材の育成を強化してまいります。

成長を促す「グリーン改革」
3つ目は、成長を促す「グリーン改革」であります。
地球温暖化の進行に伴う気候変動により、今後、豪雨や猛暑のリスクがさらに高まることが予測される中、2050年までに二酸化炭素の排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」として、姫路の脱炭素化をけん引してまいります。
ゼロカーボンシティの推進については、市民生活における脱炭素化を促進するため、住宅用宅配ボックスの設置費用を助成し、物流における再配達を抑制するほか、家庭用蓄電システムの導入費用を助成します。
併せて、事業所の脱炭素化を促進するため、事業所から排出される温室効果ガスの可視化等を支援するとともに、太陽光発電設備等の導入費用を助成します。
また、森林環境の整備を推進するため、野生動物と人里の棲み分けを行うための緩衝帯を整備するほか、地域住民による里山林の整備や、道路等公共インフラ施設周辺の危険木の伐採などを促進します。
さらに、市川美化センターの後継施設として、旧南部美化センター跡地において、循環型・脱炭素社会の形成に寄与する新たなごみ処理施設の整備を推進します。
加えて、公共施設や学校のLED化のほか、EVを公用車に導入するなど、市役所のカーボンニュートラルを推進してまいります。

にぎわいを創出する「まちづくり改革」
4つ目は、にぎわいを創出する「まちづくり改革」であります。
「住んでみたい」、「住み戻りたい」、そして「住み続けたい」と思えるようなまちを目指して、若者や外国人、企業を惹きつける施策を戦略的に展開してまいります。
さらなる「ひめじ創生」の推進については、市民投票により決定する本市のブランドメッセージとロゴを旗印とし、さまざまな主体による本市の魅力発信を促進する取組など、ふるさとプロモーションを展開し、シビックプライドの醸成や都市イメージの向上に取り組みます。
また、本市への移住・定住を促進するため、若者世帯郊外UJIターン補助金のメニューを拡充し、空き家バンク登録物件の取得費用を新たに助成します。
さらに、地域の文化・資源等を活用した、地域活性化に資する施策の調査研究内容を充実させるほか、本年3月に策定する「第3期播磨圏域連携中枢都市圏ビジョン」では、「ボーダレスな先進デジタル都市圏」の形成に向け、デジタル技術を活用した取組を展開してまいります。
戦略的なグローバル事業の展開については、日本人、外国人を問わず、国際社会で通用するスキルやグローバルな視点を備えた人材の育成に取り組みます。
また、人口減少の進行により労働力不足が懸念される中、市内企業の外国人材確保を支援するため、外国人留学生向けの合同企業説明会や、企業を対象としたセミナーを開催します。
さらに、姫路の世界的な認知度や価値の向上を図るため、昨年、姫路城と姉妹城提携を締結したポーランドのヴァヴェル城や、本年、新たに姉妹城提携を締結する予定のオーストリアのシェーンブルン宮殿など、海外姉妹都市や姉妹城等とのつながりを活かし、観光・経済・文化など、さまざまな分野での国際交流を戦略的に展開します。
にぎわいあふれる交流空間の創出については、本市の冬の風物詩となりつつある「Himeji大手前通りイルミネーション」の開催期間を、冬季に加え大阪・関西万博の期間中にも拡大し、本市のシンボルロードである大手前通りの夜を華やかに彩ります。
また、令和8年度中の開設に向け、新たな観光交流拠点となる「(仮称)観光交流センター」の整備に着手するとともに、大手前地下駐輪場トイレを再整備し、中心市街地におけるインフラ整備に取り組みます。併せて、姫路駅北駅前広場のさらなる活用に向けたアンケート調査やワークショップ等を実施します。
さらに、感動と笑顔あふれる空間を創出するため、国際大会やプロスポーツ等の大規模大会の開催が可能な「ひめじスーパーアリーナ」をはじめとする「手柄山平和公園」の再整備を推進するとともに、新施設の令和8年10月の開業に向け、開業1年前の記念フォーラムを開催し、機運の醸成を図ります。
併せて、スポーツを通じた地域の活性化を図るため、本市を拠点とするトップスポーツチームへの支援や連携を強化し、スポーツコミッション事業をさらに推進します。
加えて、Park-PFIによる飾磨中央公園の再整備や、播但連絡道路花田インターチェンジ北東付近において「(仮称)道の駅姫路」の整備に取り組みます。
地域コミュニティの活性化については、多世代交流の創出を図るため、市立公民館の会議室等を子どもの学習スペースとして開放し、子どもの居場所づくりを進めるほか、地域人材等を講師に迎え、知的好奇心を刺激する魅力的な講座を開催します。
また、空き家の倒壊等による被害を防ぐため、老朽危険空き家の除却費用の助成や、空き家バンクに登録されている物件の利活用促進に取り組むほか、空き家対策の強化に向け、空き家の現状を把握するための実態調査を実施いたします。

「命」をたいせつにする市政
メインテーマの第2は、「命」をたいせつにする市政であります。
市民の皆さまのかけがえのない「命」をしっかりと守り抜く、安全安心なまちを築くとともに、生涯にわたって健康にくらせる社会の実現を目指してまいります。
安全安心なまちづくりの推進については、阪神・淡路大震災の発生から30年の節目を迎える中、震災の記憶や教訓を風化させることなく、未来へと継承していくための事業として、震災をテーマとした講演会を開催するほか、第3回国連防災世界会議で採択された国際的な防災の指針「仙台防災枠組2015-2030」に沿って、本市のこれまでの防災・減災に係る取組を分析・評価し、防災・減災対策のさらなる強化につなげてまいります。
また、姫路駅周辺エリアで発生が予測される帰宅困難者の安全確保を図るため、関係機関との協定締結など帰宅困難者対策に取り組みます。
さらに、災害時に女性や障害者など配慮が必要な方が安心・快適に利用できるトイレトレーラーを導入し、市内での活用はもとより、本市が過去の災害で被災地支援を行った経験を活かしながら、他都市への派遣を視野に入れた運用を行います。
併せて、地域防災活動の活性化を図るため、防災に関するアドバイザーとして活動する「ひめじ防災マイスター」を育成するほか、市民の皆さまが住宅に耐震シェルターを設置する費用を助成し、住まいの耐震化を促進します。
加えて、近年頻発する豪雨等による浸水被害の軽減を図るため、雨水貯留施設や、ポンプ場等の整備を推進するほか、盛土の崩落等に伴う災害を防止するため、本年4月から市内全域で一定規模以上の盛土等を規制します。
また、老朽化が進む姫路東消防署の移転整備や、救急隊と医療機関が傷病者の情報をリアルタイムに共有できる「播磨姫路救急搬送システム(HEARTS(ハーツ))」の更新のほか、マイナ保険証を活用した円滑な救急業務の推進など、市民の皆さまの安全安心の確保に向けた取組を進めます。
さらに、消防分野における女性のさらなる活躍を推進するため、女性消防吏員の採用活動の強化等に取り組んでまいります。
誰もがいきいきとくらせる社会の実現については、本市における臨床研究を促進するとともに、地域の医療人材の確保・育成を図るため、「(仮称)はりま姫路地域臨床研究推進センター」の設置を支援するほか、こども医療など福祉医療の助成対象者が、マイナンバーカードを医療費受給者証として利用できるよう、福祉医療システムの改修に取り組みます。
また、がんの遺伝学的検査費用の助成や、子宮頸がんHPV検査単独法の導入など、がんの早期発見に向け新たな取組を実施します。
さらに、高齢者にスマートフォンの楽しさや便利さを知っていただけるよう、スマホサロンや各種体験イベントの充実に取り組むほか、フレイルや認知症予防をさらに強化するため、地域コミュニティへの参加促進にもつながる地域情報掲示板サービスの導入や、高齢者や障害者がタクシーや船舶を利用する際の優待乗車助成券等のデジタル化に向けた取組を進めます。
また、生涯にわたる学び直しの機会を創出するとともに、地域づくり人材の育成等を図るため、生涯学習大学校のカリキュラムの充実に取り組むほか、人生の最期の日まで自身の意見が尊重され、安心して自分らしい生活を送ることができるよう、終活支援事業を行います。
さらに、「(仮称)姫路市孤独・孤立官民連携プラットフォーム」を新たに設置し、社会全体で人と人とのつながりを生む環境の整備に着手するほか、福祉に関し、さまざまな悩みを抱える市民の皆さまが、より気軽に相談できる福祉相談AIチャットシステムを導入します。
併せて、医療的ケア児等コーディネーターによる相談体制の整備や、民間事業者が障害者への合理的配慮の観点から施設のバリアフリー化等に取り組む費用を助成するほか、音声認識AI技術を活用した難聴者窓口支援機器等の追加配備や、要介護認定調査のデジタル化を進めてまいります。
加えて、介護人材を確保するため、市内事業所で働く介護職員の奨学金返済支援や、家島地域での介護職員等の居住支援に取り組みます。

「くらし」を豊かにする市政
メインテーマの第3は、「くらし」を豊かにする市政であります。
市民の皆さまの「くらし」を彩り豊かなものとするため、観光や文化、産業の振興を通じて、市域全体の活性化を力強く推し進めてまいります。
観光資源の充実と魅力発信については、本年開催される大阪・関西万博及び瀬戸内国際芸術祭の開催を契機とした観光プロモーションを展開するとともに、昨年、ユネスコの無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」の技を先人から継承している播磨の日本酒をはじめ、姫路の多彩な地場産品を万博会場において世界に広く発信します。
また、国内外から訪れる観光客を本市に誘客するため、「姫路城の特別公開」や「Himeji大手前通りイルミネーション」、「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」の成果を活かした展示など、魅力的なイベントを開催するとともに、観光客の利便性向上のため、姫路城をはじめ周辺施設において、時間予約制デジタルチケットの導入を進めます。
さらに、万博の効果を一過性のものとせず、持続的な観光誘客につなげるため、姫路城周辺エリアにおいてクリスマスイベントやライトアップイベントを開催し、冬季の観光コンテンツの充実を図るほか、ナイトツアーや食のプロモーションなどを展開します。
併せて、地域全体の魅力と収益力の向上を図るため、DMOと連携しながら、観光産業の育成に向けた支援や、観光マーケティングデータの収集・分析、海外映画の誘致プロモーション等に取り組み、戦略的な観光地域づくりを推進します。
加えて、令和8年度に本市で開催されることが決定した「第20回世界歴史都市会議」など、MICEの誘致・開催を通じて、「国際会議観光都市・MICE都市」としての本市の魅力を広く世界にアピールしてまいります。
文化芸術の振興については、秋の姫路を彩る新たな文化芸術事業として、多彩なジャンルのステージやパフォーマンスが披露される催しを、9月から2か月にわたり姫路駅北にぎわい交流広場や大手前通り等において開催するほか、桂米朝生誕100年記念事業などを実施します。
地域産業の活力増進については、観光分野において女性活躍を推進するためのセミナーを開催するほか、女性や高齢者等が働きやすい職場環境づくりに積極的に取り組む企業を支援します。
また、事業所の新増設等を行う事業者に対し奨励金を交付する工場立地促進制度を見直し、成長産業や大規模雇用事業所などの企業誘致に重点的に取り組みます。
さらに、本市の魅力ある地場産品等の販路開拓に向け、国内外の展示会への出展を支援するほか、スタートアップや事業承継を支援するため、商工団体と連携した相談会や各種セミナーの開催に加え、創業時の市場開拓や情報発信に係る助成を拡充します。
併せて、中小企業の生産性向上や業務効率化を促進するため、業務のデジタル化に要する経費を助成します。
加えて、農業分野における労働力不足の解消や、農業に触れる機会の創出を図るため、農作業を手伝ってほしい農業者と農業に関わりたい方とのマッチングを支援するとともに、新規就農や企業の農業参入を促進するための取組を進めてまいります。

「一生」に寄り添う市政
メインテーマの第4は、「一生」に寄り添う市政であります。
市民の皆さまに「一生」を「ふるさと・ひめじ」で過ごしたいと思っていただけるよう、将来にわたって安心してくらせるまちづくりを進めてまいります。
都市基盤の強化については、播磨臨海地域道路の早期整備を目指し、国や県と連携しながら、引き続き都市計画の手続を進めてまいります。
また、姫路港広畑地区及び網干地区における臨港道路等の着実な整備に向け、関係機関と連携しながら、臨港道路網干沖線・広畑線及び国道250号への接続道となる市道広畑60号線の整備を推進してまいります。
さらに、慢性的な渋滞の解消や密集市街地の防災力向上に向け、広畑幹線及び鹿谷田線において、新設橋梁を含む道路整備事業に取り組むほか、JR網干駅前土地区画整理事業に合わせ、網干線の整備に着手するとともに、姫路駅周辺の南北交通の円滑化に向け、内環状東線の整備を推進します。
併せて、安全安心な水道サービスを提供するため、令和13年春の供用開始を目指して、老朽化した甲山浄水場に代わる新たな基幹浄水場の整備に着手するとともに、家島地域に水道水を安定的に供給するため、海底送水管の更新に取り組みます。
加えて、下水道管きょの健全性の確保に向け、老朽管路の更新をより効率的かつ効果的に行うため、従来の詳細検査に加え、カメラ等による管路点検を新たに導入し、管路調査のスピードアップを図ってまいります。
公共交通の利便性向上については、令和8年春に開業する手柄山JR新駅の周辺整備に取り組み、その他の市内鉄道駅についても、誰もが安全かつ快適に利用できるよう、「鉄道駅周辺整備プログラム」に基づき、計画的に整備を進めます。
また、公共交通空白・不便地域において、コミュニティバス等の充実に取り組むほか、路線バスの利用促進に向け、民間事業者と連携しながら、サイクル&バスライド等を推進します。
信頼ある行政運営の推進については、市役所の効率的な職場環境づくりを進めるため、生成AIの活用による業務効率化や、電子請求システムの導入に取り組みます。
また、窓口業務のデジタル化の推進による業務の効率化や市民サービスの向上と併せて、市役所の窓口等の開庁時間を9時から17時に変更することで、職員の働き方改革を推進します。
さらに、職員等が利用できる保育施設を本庁舎内に整備し、育児とキャリア形成の両立を支援するほか、職員の情報を一元管理し、人材の最適配置や能力向上を図ることによって、より効果的な行政運営を推進してまいります。

おわりに
以上、令和7年度の主要な事業について、ご説明を申し上げました。
私は市長就任以来、市民の皆さまの「命」「くらし」「一生」を守り、支えるため、全身全霊で市政運営を推進してまいりました。
その中で、大きな課題に直面することも多々ございましたが、その度に職員と協議を重ね、知恵を出し合いながら、市民の皆さまにとっての最善を見極め、限られた資源の中で最大の効果を発揮するために力を尽くしてまいりました。
冒頭にも申し上げましたとおり、人口が自然増加する時代は終わり、私たちは、人口減少時代を歩み始めています。
この、我が国がこれまで経験したことのない困難な時代を前にして、私たちの未来、子どもたちの未来はどうなるのだろうと、不安を感じておられる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
大都市圏への人口集中に歯止めがかからない今、社会の担い手となる若者が住みたいと思い、子どもを産み育てたいと思えるまちを築かなければ、いずれ本市は立ち行かなくなります。
さらに、市民サービスや公共施設のあり方を時代に即して抜本的に見直し、あらゆる可能性を考慮しながら最適化を進めなければ、「ふるさと・ひめじ」を未来へ引き継いでいくことが出来ません。
人口減少時代は、先行きを見通すことが困難な深い霧の海を航海するようなものです。
だからこそ、これから本市を待ち受ける10年先、20年先の未来から逆算して、いま行うべき施策やその優先順位を決める「バックキャスティングな思考」を羅針盤としながら、市民の皆さまの安寧と明るい未来のために、全職員一丸となって、この時代に立ち向かってまいります。私はその先頭に立つ者として、不退転の決意で挑む覚悟です。
持続可能な姫路のまちづくりを推進するためには、市民の皆さま、議員の皆さまのご理解・ご協力が欠かせません。
市民の皆さま。
この困難な時代において、これまで先人が築いてきた姫路を次の世代へとたいせつに引き継いでいくために、痛みを伴う決断を下さなければならない時がやってまいります。
それでも、ずっと姫路に住みたいと思っていただけるまちを築いていくために、私は市長として、皆さまと真摯に向き合いながら、地域の活力を維持するための方策を懸命に追求してまいります。
あの時の、あの決断があったからこそ、今の姫路がある。いつかそう思える日が来るように、皆さまの声に耳を傾けながら、全力で市政を推し進めてまいります。姫路の未来を共に切り拓いてまいりましょう。
そして議員の皆さま。
「姫路でくらして良かった」と、市民の皆さまに思っていただけるまちを築いていくためには、皆さまと両輪となって市政を推進することが不可欠です。
それぞれの立場から対話を重ね、想いを一つに、人口減少時代における姫路のまちづくりを進めてまいりましょう。
市民の皆さま並びに議員各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、令和7年度の所信表明といたします。