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Vol.16 マルチクリエイター / 美安良一さん

  • 更新日:
  • ID:32599

“好き”を仕事に!デジタルの力でクリエイティブな人生を

美安良一さん写真

好奇心を原動力に、“好き”を仕事へと変えてきたものづくり職人・美安良一さん。家のシンボルである表札から、オリジナルのデザインを施したバッグやスリッパ、インテリア雑貨など、デジタル技術を用いた唯一無二のものづくりに取り組んでいます。創造の原点にある想いと、ものづくりのまち・姫路の未来を見据えた挑戦に迫ります。

美安 良一(みやす りょういちさん

1961年、姫路生まれ。表札をはじめとしたエクステリア商品などを扱う「株式会社ヒロノクラフト」の代表取締役。「平成24年度兵庫県発明賞」「令和元年度姫路市技能功労賞」を受賞。現在は、デジタルファブスペース「HironoCraft Fab(ヒロノクラフトファブ)」を拠点とし、最新のデジタル機器を駆使したものづくりを行う。

アイデアが初めて形になった瞬間

ものづくり

縫製会社を営む両親のもとで生まれ育った美安さん。いつもミシンや布、作業音が身近にあり、幼少期からずっとものづくりが日常に溶け込んでいたといいます。

大学時代は経済学を学び、その後は大手メーカーの営業マンとして10年ほど勤務。結婚を機に、奥さんの実家である「株式会社広野鉄工所」を継ぐことに。金属加工を営む町工場で、職人としての加工技術や素材、設計を学びました。

石材加工

2000年ごろ世の中でガーデニングブームが巻き起こり、「何か自分もおもしろいことをしたい」と、美安さんは庭の置き石を加工することに。鉄工所にあった機械で石の表面を研磨し、そこにサンドブラストと呼ばれる石材加工技術を用いて彫刻して着色。石に文字やイラストを描き、エクステリア商材として楽しめる新たな商品を生み出しました。 

庭石の注文がどんどん増えていったある日、美安さんの元に自然石を使った表札を作ってほしいという一件の依頼が届きます。

「表札」は「家のシンボル」であり、家族の想いや物語が宿るアイテム。その表札一つひとつに家族の個性を表せたら、“唯一無二のものづくり”ができるのでは?——そんな好奇心がくすぐられ、美安さんは二つ返事で表札づくりを引き受けました。

ものづくりの可能性を広げた、唯一無二の表札づくり

表札

ふとしたアイデアから生まれた新しい事業が軌道にのり、2005年には表札づくりを主軸としたブランド「ヒロノクラフト」を立ち上げ。本業は鉄工所、けれど美安さんにとって、素材に縛られる必要はありませんでした。「鉄工所だから鉄しか扱えない、なんてことはないんです。アイデアさえあれば、必要な素材も技術も後から探せばいい」。素材が変われば表情も変わります。デザインの可能性は、無限に広がっていくのです。美安さんが一貫して向き合ってきたのは、素材ではなく“アイデア”そのものでした。

そこから鉄や石だけでなく、ガラスやステンレスなど、さまざまな素材を使って表札をつくっていく中で、「クリスタルガラス表札LED仕様」の特許を取得。さらに、2012年には「平成24年度兵庫県発明賞」を受賞しました。

クリスタルガラス表札LED仕様

「クリスタルガラス表札」は、夜になるとガラスに埋め込んだLEDが自動で点灯し、文字が立体的に浮き上がるスタイリッシュな雰囲気が魅力。この表札には、美安さんがデザインを手がける上で大切にしている、「陰と陽のバランス」が絶妙に表現されています。 

「デザインも人生も、すべては陰と陽のバランスが大切です。影があるからこそ光が輝くように、うまくいかない時間さえも次の発想を育てる“陰”となります」——そう語る美安さんがもう一つ大切にしているのが、“自分軸”で生きること。人の意見に左右されず、“やりたい”という好奇心に身をまかせて“自分軸”で動けば、仕事も勉強も遊びになる。そんなポジティブな姿勢を持ち続けているからこそ、この仕事を辛いと思ったことは一度もないそうです。

デジタルがつないだ、世界との“出合い”

作業の様子

事業を大きくしていく上で、キーポイントとなったのがインターネットの存在。まだ、ほとんどの商店がホームページを持っていなかったような時代に、美安さんはいち早くその実用性に気付き、独学でホームページの作成からネット販売までの一連の流れを作りました。

「ホームページさえあれば、姫路を出なくても、世界中のお客さんと繋がることができます」と美安さん。世の中のDX浸透の波にも乗り、ホームページやブログをはじめ、Instagram、Facebook、X、TikTok、Pinterestなど、さまざまなデジタルメディアを活用。その更新作業も美安さんにとっては“仕事”ではなく、“生活”の一部。自分の作品集を作り上げているような感覚で、気付けばSNSの更新は、朝食を食べる前の日課となり、10年近くも続いているそうです。

デジタル機器

常に好奇心を持ち、時代の流れをいち早くキャッチしている美安さん。「ヒロノクラフト」の表札づくりも次第にアナログからデジタルに進化を遂げていきます。3DプリンターやUVプリンター、レーザー加工機を使った表札もその一つ。UVプリンターとは、紫外線(UV)ライトを照射することで、瞬時に硬化・定着する特殊なインク(UVインク)を使用するプリンターのこと。紙だけでなく、プラスチック・木材・金属・ガラス・革など、さまざまな素材に直接フルカラー印刷することができます。

馬名プレート

そんな最新のデジタルプリンターを使った美安さんの代表作には、騎手を引退後2024年に開業した「JRA福永祐一厩舎(きゅうしゃ)」の馬名プレートもあります。2025年1月の厩舎移転リニューアルに伴い、管理馬すべての馬名プレートをヒロノクラフトが製作。美安さんが表札づくりの上で大切にしている、素材感やデザインのこだわりが伝わる、かけがえのない作品が生まれました。 

「僕が作っているのは“商品”ではなく“作品”。お客さんからテーマをもらい、僕がそのアイデアを形にしていくのがものづくりです。“想像以上のものができてうれしい”と喜んでもらえることが、何よりものやりがいです」。そう語る美安さんは、いくら技術が進歩し、デジタル化が進んでも、お客さんの想いや家族の背景に耳を傾ける姿勢は変えず、そこに宿る“個性”を尊重しています。

そのようなものづくりへの姿勢が評価され、2019年には、“優れた技能を長年培い、業界や地域社会の発展に大きく貢献した技術者”として「姫路市技能功労賞」も受賞しました。

ヒロノクラフトが描く未来の姫路

デジタルファブリケーションスペース

2022年7月には、自身の作業場兼クリエイターのためのデジタルファブリケーションスペース「ヒロノクラフトファブ」を鉄工所の隣にオープン。デジタルファブリケーションの「ファブ」は「Fabrication(ものづくり)」と「Fabulous(楽しい)」を合わせた造語で、「デジタルの力で楽しみながら創造する」という意味が込められています。 

「自分と同じように、若者にも “好き”を仕事にしてほしい」と想いを寄せる美安さん。図工室をイメージして作ったファブ空間には、CNC彫刻モデリングマシンや3Dプリンター、デジタルミシンなど、ボタン操作一つでデザインを形にすることができる最新のデジタル機器を完備。オリジナルのTシャツや帽子、キーホルダー、インテリア雑貨など、多彩な作品づくりができる場となっています。それと隣り合わせに、ギター、ゴルフ、クラシックカー、映像プロジェクターなど、美安さんの“好き”があちこちにあふれ、まさに“楽しい”を体現した大人の遊び場のような空間が広がっています。

※写真はイメージです

将来的には、2階を一般の人やクリエイターが自由に利用できるオープンスペースにして、コーヒーを飲みながらパソコン作業をしたり、その場でデザインを考えて、1階ですぐに作品づくりができたりする、ラボのような空間にしていきたいと展望を語ります。

スキヒメメッセージ

美安さんが描く未来は、「ものづくりで好きが仕事になる姫路」。姫路城に象徴される、ものづくりのまち・姫路で生まれ育ってきた美安さんにとって、姫路城は何度見ても思わず目を奪われるほど美しく、“世界に誇れる木造建築”だと胸を張ります。 

そんな地元が誇るお城の歴史を、ユニークに、そしてクリエイティブに伝えたいと、デジタルミシンを使って2025年に新たに生み出したのが、歴代の城主の家紋を刺繍した帽子です。家族の歴史(名前)が刻まれていく表札と同じように、帽子にもまた、姫路の歴史をそっと織り込む。そんな姫路ならではの、観光客(インバウンド)に向けた商品の制作・販売にも取り組んでいます。

「技術の進歩が進み、今はボタン一つで、だれでもアイデアを形にできる時代。そんなものづくりの楽しさを一人でも多くの若者に伝えていけたら」。美安さんの視線の先には、個性と創造力にあふれた若きクリエイターたちが活き活きと暮らす、未来の姫路が見えています。

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