Vol.18 漆芸家 / 江藤雄造さん
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アクリル板に金魚の蒔絵? 伝統と現代を融合させた作品づくり

子どものころから作業場へ出入りし、父と同じ漆芸家の道を自然と歩むようになった江藤さん。さまざまな技法を学びながら、「新しい発想を取り入れたい」と異業種との繋がりも広げ、金継ぎ教室をはじめ、アクリル板を使った金魚の蒔絵など、さまざまなアイデアで話題性のある作品を生み出しています。
江藤 雄造(えとう ゆうぞう)さん
1982年生まれ。姫路市出身・在住。江藤家の一人息子として生まれ、2001年に兵庫県立龍野実業高等学校 デザイン科(現:兵庫県立龍野北高等学校 総合デザイン科)を卒業後、父であり漆芸家の江藤國雄さんに師事。各地の名だたる作家に指導を受けながら2012年から1年間、香川県漆芸研究所の研究院に入所し、さまざまな技法を学ぶ。卒業後は各地で金継ぎ教室や個展、イベントを開催。伝統と現代を融合させた今までにない作品づくりに取り組み、企業とのコラボも行っている。
父の背中を追って漆芸の道へ

漆芸家である父の自宅の一部を工房にして、文化財の修復や作品づくりに取り組んでいる江藤雄造さん。一人息子として誕生した江藤さんは、作業場で黙々と働く父の背中を見て育ち、自然と同じ道を志すように。
もともと、絵を描くのが好きで、手先が器用だったこともあり、兵庫県立龍野実業高等学校のデザイン科(現:兵庫県立龍野北高等学校 総合デザイン科)へ進学。入学後から父の仕事を手伝い始め、卒業後は父のもとで修業を始めました。「小さいころから作業場に出入りし、父のしている仕事を見るのが好きだったことや自分のペースで進められる仕事だったこともあり、跡を継ぐことは自然な流れでした」と話します。

父のもとで漆芸の基礎を学ぶ傍、和歌山県で塗りを勉強、神奈川県の作家のもとで麻布を漆で何重にも塗り重ねた「乾漆(かんしつ)」を学ぶなど、幅広い技法を習得していった江藤さん。また、2012年に入所した香川県漆芸研究所の研究院では竹細工に幾度も漆を塗り重ねて磨いた「籃胎(らんたい)」(上写真の通り)の技術を身につけるなど、各地の名だたる作家に指導を受けながら、修業を重ねました。
漆芸の魅力を広めようと始めた「金継ぎ教室」がブームに

伝統技術を継承する一方、「漆芸の魅力を多く人たちに伝えたい」と13年ほど前から始めたのが「金継ぎ教室」。金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を漆を使って接着し、その上に金粉で装飾して仕上げる日本の伝統的な技法。傷は単なる欠陥ではなく、器の歴史や物語として受け入れ、“新たな美しさ”として再生させる表現の一つです。

“物を大切にする”という日本人ならではの精神が共感を呼び、コロナによって自宅で過ごす時間が増えると生徒数は一気に増加。今では年間で2200人を超える生徒を抱えています。「SDGsの意識の高まりで、使い捨ての時代から物を修復して大切に使う時代に変わってきました。旅先で購入したお気に入りの器や子ども用の茶碗など、思い出の器を持ってこられる人も多いですよ」と江藤さん。金継ぎはここ数年、ブームになっています。

京阪神を中心に15カ所で開催している金継ぎ教室のほか、百貨店などでの個展やアートフェア、漆芸を広く知ってもらうためのイベントなどで、全国各地を飛び回る江藤さん。多忙な日々のなかでも、作品づくりの時間を捻出しながら挑戦を続けています。電車や車での移動中も目に入る景色や看板からアイデアが浮かぶことが多く、睡眠時間以外、頭はフル稼働だそうです。

そんな中、“今までにない挑戦”として6年ほど前から取り組んでいるのが伝統と現代を融合させた作品づくり。その代表作の一つが、アクリル板を使った金魚の蒔絵です。透明なアクリル板の表と裏に金魚を描くことで奥行きが生まれ、まるで生きているかのように、水の中を泳ぐ金魚を表現しています。
きっかけは6年ほど前に開催した個展。子どもが楽しめる作品ができないかとアクリル板に金魚の蒔絵を施し、一枚ずつ会場の床に重ねたところ、子どもたちは「生きているみたい」と喜んでアクリル板の上に乗り、しばらく金魚を眺めていたそうです。
異業種とのコラボが生む新しい漆芸の形

アクリル板に金魚を描いた作品がさまざまな業界の人たちの目に留まり、ホテルのロビーや客室に作品が展示されたり、自動車メーカーとコラボをしたり、異業種の人たちと繋がり、コラボ作品を生み出すように。
そのきっかけとなったのが、自動車ブランド「LEXUS」が主催する「LEXUS
NEW TAKUMI PROJECT 2018」の兵庫県代表に選ばれたこと。「日本のモノづくりを守り・育てたいという思いから、各地の若き “匠”の才能を発掘し、地域から日本全国へ、そして世界へと羽ばたくことをサポートする活動で、さまざまな伝統工芸を担う人たちと繋がれたのはうれしかったですね」と話し、そこで知り合った岩手の匠からは企業を、岡山の匠からは金継ぎの依頼者を紹介してもらい、8年前に知り合った仲間たちとの繋がりが今も生きています。
伝統と現代が融合するまちへ

文化財の修復にも携わる江藤さんにとって、ものづくりの原点ともいえる存在が、世界文化遺産である姫路城。何度も修理を重ねながら、築城当時の姿を保っているのが魅力といいます。「私も春日大社や住吉大社、長谷寺など、文化財の修復を手掛けましたが、解体すると300年、400年前に修理をした人の名前が刻まれていたり、木札が入っていたりします。修理をすることで当時の技術に触れることができますし、自分の名前を後世に残すこともできます」と話す江藤さん。姫路城も「平成の大修理」では屋根瓦の葺き直しや漆喰の塗り直しが行われ、美しい姿が復活しました。「作品づくりに行き詰まったら姫路城に出かけ、修理を手がけた先人たちからパワーをもらっています」。

江藤さんの姫路での夢は、JR姫路駅中央コンコース正面に整備された姫路城が一望できる展望デッキ「キャッスルビュー」の床に、自身の作品の一つである金魚を描いた透明のアクリル板を敷き詰めること。「空間全体を一つの作品として構成し、観光客にも姫路城と床の金魚のコラボを楽しんでほしいです」と熱い思いを語ります。「そのほか、体感できる作品づくりやライブイベント、地元企業ともコラボできたらうれしいですね」と話し、頭の中にはさまざまなアイデアが浮かんでいるそう。伝統と現代を融合させた江藤さんの作品は、きっと姫路のまちに素敵な化学反応を起こしてくれることでしょう。

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