Vol.27 ボランティア団体リーダー/ 竹尾 かおりさん
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“おしゃれに、楽しく、ごみ拾い”から始まった――。まちと自然をゆるやかに繋ぐ「greenbird 姫路」の10年

姫路のまちなかや川、海辺で、カラフルなビブスを着て楽しそうにごみを拾う人たちがいます。「特定非営利活動法人greenbird(グリーンバード)姫路チーム」です。活動を率いるのは、姫路出身の竹尾かおりさん、通称たけちゃん。原宿発の“おしゃれでかっこいいごみ拾い”に惹かれたことをきっかけに、人との出会いを重ねながら、姫路での活動を立ち上げてきました。目指しているのは、「ごみを拾う人を増やすより、捨てない人を増やしたい」という思い。そう語る竹尾さんの視線の先には、人とまち、川と海、暮らしと自然が一つに繋がっていました。
竹尾 かおり(たけお かおり)さん
姫路市出身。「greenbird 姫路チーム」リーダー。アウトドアメーカーに勤務しながら、姫路のまちなか、鹿島川、福ヶ浜などで清掃活動を続けている。2014年にgreenbirdと出合い、約2〜3年の準備期間を経て姫路での活動を本格化。現在は月3回を基本に、姫路駅周辺と高砂の鹿島川、たつのの福ヶ浜で活動を行い、だれもがふらっと参加できる場づくりを大切にしながら、まちと自然を繋ぐ活動を続けている
“かっこいい”から始まった姫路での挑戦

竹尾さんがgreenbirdを知ったのは、まちのごみに強い問題意識があったからではありませんでした。最初の入り口は、もっと感覚的で、もっと率直なものだったといいます。
「かっこいいなって思ったんです」
greenbirdは、2002年に原宿・表参道の商店街の若者たちから始まった活動。ごみ拾いにありがちな“ネガティブで地味なもの”というイメージを変えようと、ビブスやトング、ごみ袋の見せ方まで含めてデザインされていました。まちをきれいにするのはもちろんですが、本当に伝えたいのは「ポイ捨てってかっこ悪いよね」というメッセージ。その理念や洗練されたデザインも含め、そのスタイルに竹尾さんは強く惹かれました。

そのgreenbirdとの出合いは、意外にも姫路で訪れました。パン屋を立ち上げるための「土壁を塗ろう」というワークショップで出合ったのが、岡山でgreenbirdのリーダーをしていた人でした。「こんな活動やってるねん。よかったらおいでよ」と誘われたことが転機になります。
岡山で最初に参加したのは、離島で行われるトレイルランニング大会のための道の整備のような活動でした。竹尾さん自身、アウトドアメーカーに勤務し、自然の中で過ごすことが好きだったこともあり、清掃を“義務”ではなく、自然の中で体を動かす時間として受け止めやすかったのだと振り返ります。
それまで清掃活動に関心や興味があったわけではなく、軽やかなきっかけだったといいます。ただ、岡山で触れたgreenbirdの空気感は、彼女にとってすっと入ってくるものでした。
「これって姫路でもできるかな」
その思いは、少しずつ現実になっていきます。ただし、greenbirdは大きなNPO団体で、本部があり、既存チームとの関係もあります。姫路で活動したいと考えても、すぐ許可が下りるわけではありませんでした。

最初は神戸チームの支部のような形で活動をスタート。竹尾さん自身も、自分で発信し、知人に声をかけ、活動報告を書き続けながら実績を積み重ねていきました。
その間、告知・実施・報告を丁寧に積み重ね、活動を“続けること”を大切にしてきました。そうしてgreenbirdに出合ってから正式に姫路でチームとして認められるまで、2〜3年の歳月をかけて少しずつ、greenbird 姫路は形になっていきました。
リーダーとしての悩みと今――“広げなきゃ”から解放されるまで

順調に見えた活動の裏で、竹尾さんの考えやチームの在り方にも変化が生まれていきました。その一つが、リーダーとしての在り方に対する悩みです。特に大きかったのは、「自分の色が強すぎるのではないか」という葛藤でした。
greenbirdは全国に多くのチームがあり、リーダーが交代しながら世代を繋いでいる地域も少なくありません。そうした姿を見る中で、「自分も次のリーダーを探さなければ」と思った時期があったといいます。
一方で、自分の存在感が強くなることで、次の担い手のハードルになってしまうのではないか――そんな不安から、自分の色を消そうとしたこともあったそうです。また、「人数を増やしたい」「もっと活動を広げたい」という気持ちも強く、他のチームと比べてしまうこともありました。

そんな中で、少しずつ考え方が変化していきました。コロナ禍を経て、あえて活動量を減らし、立ち止まる時間を持つようになります。
そして、大阪・関西万博において、パートナー企業が出展する「ウーマンズパビリオン」でのトークセッションに向けた準備や対話を重ねる中で、自身の活動を改めて見つめ直しました。その過程で、人の暮らしと自然が循環の中で結びついていることに気づきます。

山から川へ、川から海へ――ごみの流れの先にあるのは、「人の暮らし」と「自然」の繋がりでした。自分たちの活動もその循環の一部にあると気づいたことで、「どれだけ広がるか」や「何人集まるか」ではなく、目の前の場所に関わり続けること自体に意味があると思えるようになりました。
今では「3人でも5人でもいい」と笑う竹尾さん。無理に後継者を探すのではなく、やりたい人がいれば自然に現れる。参加者同士で声をかけ合い、役割が生まれている今の“場”を大切にしたいと考えています。
「拾う人」より「捨てない人」を増やしたい

活動の中で、竹尾さんはさまざまな出会いや気づきを重ねてきました。印象に残っているのは、広島・福山で車椅子ユーザーとしてgreenbirdチームを立ち上げた女性との出会いです。
彼女が姫路チームに参加した際、姫路の車椅子ユーザーの友人も誘い、一緒に活動しました。その中で、これまで気づけていなかった視点に出合います。点字ブロックは視覚障害者を助けるものですが、車椅子ユーザーにとっては走りづらさに繋がることもある。トングで拾えなくても、「あそこにあるよ」と声をかけるだけで関われる。ボランティアは“拾える人だけのものではない”ということに気づかされたといいます。

一方で、ごみの現実は決して楽観できるものではありません。目立つ場所はきれいでも、一歩路地に入るとごみは多く、川には不法投棄と思われるものも見つかります。それでも、竹尾さんたちは悲観的にはなりません。なぜここにあるのかを想像しながら、時には冗談を交えつつ向き合います。「悲観的になったら続かない」という言葉の通り、楽しさを大切にしてきました。
そうした活動の積み重ねの先にあるのが、竹尾さんの変わらない思いです。「ごみを拾う人を増やすより、捨てない人を増やしたい。ただきれいにするのではなく、“ポイ捨てはかっこ悪い”と自然に感じてもらうこと。ごみ拾いを特別な行為にせず、日常の延長として関われる存在にすること」。それが、竹尾さんの考えるgreenbirdの在り方です。
関わるほど、愛おしくなる姫路のまち

竹尾さんは姫路生まれ。大学時代も自宅から通い、結婚後も姫路で暮らしてきました。よく「姫路ラブやね」と言われるそうですが、本人は少し照れながらこう話します。「姫路で何かアクションを起こしたら、もっとまちが愛おしくなるよってことを、みんなに知ってほしいんです」。

姫路の魅力は、お城だけではありません。川や海、山が無理なく繋がる風景の中で、人の暮らしが息づいていること。その“すべてが繋がっている感じ”が好きだといいます。
実際、竹尾さんの活動もその風景の延長線上にあります。活動を通してまちや人との距離も自然と近づいていきました。そうした実感が、姫路への思いをより深めているのかもしれません。
もっとボーダーレスに、もっと自然に

一人で始めた挑戦は、今では多くの人が関わる大きな活動へと成長し、年間実績では全国トップを誇るまでになりました。けれど竹尾さんは、それは決して一人の力ではなく、参加者一人ひとりがつくってきた空気感のおかげだと話します。
初参加の人に自然に声をかけたり、トングやごみ袋をさっと配ったり、頼まれなくても周囲を気遣ったり。そんなやさしい空気感が、“greenbird 姫路”らしさとして少しずつ育ってきました。

10年という節目を迎えた今も、目指しているのは無理に広げることではなく、だれもが気軽に関われる自然な場であり続けること。車椅子ユーザーや外国籍の人、親子連れなど、「行ってもいいのかな」と感じる人が、ふらっと来られる雰囲気を大切にしています。

ごみを拾うというシンプルな行為を通して、人と人が出会い、景色が少しずつ変わっていきます。greenbird 姫路が10年かけて育ててきたのは、きれいなまちだけでなく、“参加したくなる空気”そのものなのかもしれません。その活動は今も、そしてこれからも、まちと自然を守り続けていきます。

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