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Vol.28 建築士・エリアディレクター/ 土田 昌平さん

  • 更新日:
  • ID:33322

「姫路を“ちょうどいい”で終わらせない」――まちに秘められた“可能性”を設計

土田さんの写真

文化財やインフラ、人口規模など、さまざまな観点から「ちょうどいいまち」と表現されることも多い姫路市。そんな姫路に眠る、まだ言葉になっていない魅力や可能性を見つけ、「まちづくり」の視点で形にしようと挑戦し続けているのが土田昌平さんです。建築士として空間を設計しながら、エリアディレクターとして人や地域の営みを繋ぐ日々。大規模建築に携わってきた経験を経てたどり着いたのは、「その場所に本当に必要なものは何か」を考える仕事でした。その視線の先には、姫路のどんな未来が見えているのでしょうか?


土田 昌平(つちだ しょうへい)さん

1986年生まれ、姫路市出身。京都の大学を卒業後、建築士として大手組織設計事務所に勤務し、大規模建築の設計に携わる。2024年に独立後は、建築設計に加え、エリアディレクターとして姫路やたつの、富山など各地でまちづくりに関わる。現在は、まちづくりに携わる会社「リノベリング」の一員としても活動しながら、駅西エリアや小利木町エリアをはじめとする姫路のまちづくりに取り組んでいる。

建築士を志した原点は、憧れた建築家の存在

建築士としての仕事

高校卒業後の進路を考える中で、「なんとなく建築って面白そう」と感じたのが、建築士としての入口だったと話す土田さん。前職では「アクリエひめじ」、現在は「MONZEN」など、姫路の文化交流拠点となる施設の設計に携わるなど、建築士としてその名が知られていますが、その始まりはあくまで“興味本位”でした。

そんな土田さんが建築の世界に引き込まれていった大きなきっかけが、大学時代に出会った建築家・高松伸教授の存在です。世界的にも知られる建築家の仕事に向き合う姿勢を間近で見て、「かっこいい」と素直に憧れたと振り返ります。

アクリエひめじ

大学卒業後は、120年以上の歴史を持つ日本最大級の組織建築設計事務所に就職し、大阪での生活が始まりました。会社員時代は、新築の大規模案件が中心。東京、大阪、西宮と拠点を転々としながら、鉄骨造やコンクリート造の建築に数多く携わってきました。そして、2018年から約4年半にわたって関わった「アクリエひめじ」のプロジェクトを機に、姫路にUターンします。

姫路での転機となった「リノベーションスクール」

リノベーションスクール

土田さんにとって大きな転機となったのが、2021年に姫路市主催で開かれた「リノベーションスクール」への参加でした。このスクールは、空き店舗などを活用しながらエリアの価値向上を目指す取り組みです。建築士である土田さんのほか、地元企業に勤める人や一般の参加者など、職種を問わず「リノベーションまちづくり」に関心を持つ人々が集まり、意見を交わしながらまちづくりに取り組みました。

当時、土田さんはまだ会社員でしたが、地元・姫路のまちに関わりたいという思いから参加を決意します。対象となったのは、祖父が創業したおもちゃ専門店がある、姫路駅西側のいわゆる「駅西地区」。かつて市場があり、人と人との距離が近い、独特の空気を持つまちで、土田さんにとっても思い入れの深い場所でした。

街の商店

「このまち、おもしろいよね」。そんな発見が、土田さんの中で少しずつ膨らんでいきます。おじさんたちが目利きで仕入れた野菜を売る風景。店先で自然に生まれるあいさつや会話。これまで見過ごしていたまちの営みが、実は大きな価値を持っていることに気づいたのです。

建物を新しくつくるだけではなく、今そこにあるものの魅力を見つけ、磨き、次に繋いでいく。そんな「リノベーションまちづくり」の考え方に触れたことで、土田さんの視点は大きく変わりました。

駅西エリアにかつてのにぎわいを――人とまちを繋ぐ挑戦

駅西エリアでの朝市や店舗づくりの取り組み

リノベーションスクールをきっかけに始まった、駅西エリアでの朝市や店舗づくりの取り組み。2026年3月で開催40回目を迎えた「軒先朝市」も、「とりあえずやってみよう」と始めた小さな実践でした。回を重ねるごとに少しずつ人が集まり、まちの空気も変わり始めます。朝市が始まってから約3年。駅西エリアには新たに十数軒の店がオープンし、まちの雰囲気にも少しずつ変化が生まれています。

「最近、あの辺変わってきたよね」「盛り上がってきたね」――。そんな声をかけてもらえることが、何よりのやりがいだと土田さんは話します。

一方で、駅前という立地ゆえに家賃は決して安くなく、「やってみたい」という思いがあっても、予算の壁で断念せざるを得ないケースも少なくありません。そうした課題に向き合うため、地元のバス会社や不動産事業者、地域の仲間たちと連携し、信頼関係の中で物件を動かしていく仕組みづくりも、エリアディレクターとしての重要な役割の一つです。

「まちのためなら」と、手ごろな家賃で貸してくれるオーナーの存在も、このエリアの大きな支えの一つ。人の思いと仕組み、その両方がかみ合ってこそ、まちは少しずつ育っていく――。そんな手応えが、駅西エリアには確かに芽生えています。

人が見える場所をつくる――「MONZEN」に込めた思いとは?

MONZEN外観

リノベーションスクールでの縁から、近年手がけた大きな仕事の一つが、姫路駅前に2026年3月に誕生した、神姫バスが手がける「MONZEN」の設計です。

この空間で土田さんが大切にしたのは、単に“ものを並べる場所”ではなく、“人が見える場所”にすることでした。「だれが選び、だれが勧め、だれに聞けばこの土地の魅力がわかるのか」。そうした“顔の見える拠点”にしたいという思いが、設計の出発点にありました。

MONZEN内観

建物は南側に開きながらも、直射日光をやわらげる工夫を施し、外から中の様子が見える設計に。店内の様子が自然と伝わることで、訪れる人の興味を引き出すと同時に、内側からもまちの景色を感じられる空間となっています。

内装には、兵庫県内の手仕事を随所に取り入れ、県産木材や姫路のレザーなど、地域の素材と、そこで営みを続ける職人たちの技術を掛け合わせています。単に“地元産”を並べるのではなく、その背景にあるストーリーまで感じられる空間にしたい――そんな思いが込められています。

人と土地を繋ぐ“旅の拠点”

そうして目指したのは、兵庫県の各地へ出かけたくなる“きっかけ”となる場所。ものを見て終わるのではなく、「行ってみたい」と思えること。そして、その魅力を伝えてくれる人に出会えること。土田さんはこの場所を「人と土地を繋ぐ“旅の拠点”」と話します。

姫路を“ちょうどいい”から“めっちゃいい”まちへ

ひめじについてお話しする土田さん

京都、東京、大阪、西宮と、都市部で暮らした経験を持つ土田さん。それでも姫路に戻ってきたのは、「このまちに“まだ見えていない可能性”を感じたから」だといいます。

姫路は人口も少なくなく、新幹線も停まり、世界遺産・姫路城もある。京阪神にも近い。それにもかかわらず、まだ開拓の余地があり、挑戦できる余白が残されています。そう考えると、姫路は「何かが足りないまち」ではなく、むしろ“伸びしろのあるまち”として土田さんの目には映っています。

「姫路を“ちょうどいい”で終わらせない」――まちに秘められた“可能性”を設計

多くの人がこのまちを「ちょうどいい」と表現することに、土田さんは少し違和感を抱いています。「“ちょうどいい”で止めてしまうのは、もったいない」。本当はもっと魅力があるのに、自分たちでそこにふたをしてしまっているのではないか。まずは「めっちゃいいやん」と言ってみることから始めたい――。そんな前向きな違和感が、まちへのまなざしの根底にあります。

“ちょうどいい”で終わらせないためには、まず一歩踏み出すこと。そして、人と人との繋がりの中で、その場所に必要な形を見つけ出し、新たな価値を生み出していくこと。建築士として、そしてエリアディレクターとして、姫路というまちに眠る可能性を信じながら、土田さんは今日も、人と地域の間に立ち、次の風景を設計しています。

関連情報

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姫路市 政策局 ひめじ創生戦略室

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ファクス番号: 079-221-2384

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