ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

Vol.29 女子サッカーチーム代表/ 岸田 直美さん

  • 更新日:
  • ID:33404

“人”が財産となり、まちをつくる—スポーツを通じた“地域創生”を

岸田さんの写真

播磨地域を拠点に活動する女子サッカークラブ「ASハリマアルビオン」。全国から集まった選手たちは、このまちでプレーするだけでなく、地域で働き、暮らしながら、それぞれの人生を歩んでいます。そんな選手たちの、競技と仕事を両立する「デュアルキャリア」を支え、その先の人生も見据えながら、選手とまちを繋ぐ仕組みを育んできたのが、代表を務める岸田直美さん。そのピッチの外へと広がる繋がりの輪をたどります。

岸田 直美(きしだ なおみ)さん

姫路市出身。小学1年生よりピアノを始め、12歳でジャズオルガンに転向。高校に入りYMOの影響で作曲に興味をもち、25歳から舞台音楽作曲家として活動。また、短期大学の准教授や、市の「ひめじ官兵衛プロジェクト」への参加を経て、地域分野へと関心を広げる。2016年に姫路を拠点とする女子サッカークラブ「ASハリマアルビオン」の代表取締役に就任。現在は、地元企業約180社と連携しながら、スポーツを通じた“持続可能なまちづくり”を実践し続けている。

「音楽と地域」から「地域と人」を結ぶ役目に

インタビューでのようす

舞台音楽作曲家として活動する傍ら、姫路市のイメージキャラクター・しろまるひめが歌う、姫路のPRソング「城見て しろまるひめ 唄う」「ぐるっと姫路」の作詞・作曲を手がけるなど、かつては音楽分野で活躍してきた岸田さん。その活動の延長で、姫路日ノ本短期大学の准教授として、イベント集客などの社会心理学やキャリアデザインを教えてきました。その中で、同大学の学生やOGが中心となり設立された、サッカークラブ「ASハリマアルビオン」と接点を持つように。整備された練習場所すらなく、照明のない駐車場で夜遅くまで練習に励む姿を見て、「彼女たちを守れるのは私しかいない」と心を動かされ、自身の専門分野の域を超えて、クラブの環境づくりや運営に主体的に関わるようになります。

 特に岸田さんが着目したのは、全国から多くの優秀なプレーヤーが集まっているにも関わらず、卒業や引退と同時に多くの選手が地元へと戻っていく現実。「人が集まる仕組み」はすでにあるが、「まちに定着させる仕組み」がないことに着目した岸田さんは、「競技を続ける場」と、「地域で働く環境」の両方、いわゆる「デュアルキャリア」を整えることで、選手がこのまちに残る選択肢をつくることができると考えます。

そこでまず目指したのが、日本女子サッカーリーグへの参入。全国リーグ所属のチームを作ることで、選手たちがプレーを続けるモチベーションを生み出そうとします。その目標どおり、2014年にリーグ参入を果たすと、翌2015年にはなでしこリーグ2部へ昇格。さらに2016年にはリーグカップ2部で初の優勝を成し遂げるなど、異例の快進撃が続きました。その同年、クラブの法人化とともに、岸田さんは「ASハリマアルビオン株式会社」代表取締役に就任しました。

地域と繋がり、地域の未来を創る

サッカー教室のようす

岸田さんの取り組みは、トップチームの運営にとどまりません。地域の子どもたちがサッカーや運動に触れる機会をつくることも、地域密着型のチームとして大切な役割の一つだと考え、これまで幼児や小学生、特別支援学校の児童を対象にしたサッカー教室やボールあそび、親子で参加できるプログラムなどを通じて、年齢や経験、ハンディの有無に関係なく参加できる場づくりにも関わってきました。ボールに触れるのが初めての子どもや、運動に苦手意識を持つ子どもでも、それぞれのペースで楽しめるよう工夫されています。

そこにあるのは、“うまくなること”だけを目的にしない考え方。まずは「できた」「楽しい」と感じる体験を重ねること。その積み重ねが、子どもたちの自信や、他者との関わりを育み、子どもたちの体験の場を増やすことで、地域の未来が豊かになるのだと岸田さんは語ります。そして選手たちもまた、地域と関わりながら活動することで、競技者としてだけではない、まちの中での自分たちの“役割”や“居場所”を見つめ直していきます。

さらに岸田さんは、女子サッカーの普及や地域社会の活性化、次世代を担う青少年の育成・強化にも力を注いできました。岸田さんが代表に就任した後、「ASハリマアルビオン」はU18、U15、U12に加え、提携校である姫路女学院高等学校女子サッカー部まで含めると、いまでは総勢140人もの選手を擁するまでに成長。地元だけでなく、全国から優秀な選手が集まるクラブへと発展してきました。

地域と向き合い、“信頼”を築く

講演でのようす

新型コロナウイルスの感染拡大前には、年間70回もの講演や地域イベントに参加するなど、自らが地域に足を運び、クラブの思いや女子サッカーの魅力を伝え続けてきた岸田さん。ときには、試合のハーフタイムに歌って踊る中高生のチアリーダーグループ「アルビオンレディ」の中に混ざり、自らマスコットのような存在になることもあったといいます。「怖いもの見たさからか、会場に多くの方が足を運んでくれました」とお茶目に笑う岸田さん。その姿が話題となり、「おもしろい社長やな」とスポンサー提案の機会に繋がることもありました。

こうした地域密着の取り組みが高く評価され、サポーターやファンもだんだんと増え、いまではスポンサー企業は約180社にのぼります。地域クラブでここまで多くの支援が集まるのは珍しく、岸田さんは、そこに祭り文化のある姫路らしい「助け合おう」「一つになろう」という気質が表れているといいます。また、クラブ契約の終了とともに雇用も途切れてしまう例が少なくないなか、「ASハリマアルビオン」では、引退後もスポンサーとなってくれた地元企業で働き続ける人が多いそうです。

その背景には、岸田さん自身が築きあげてきたスポンサー企業との信頼関係があります。「信用・信頼が何よりも大切」と語る岸田さんが、シーズン半ばに絶対に欠かさない中間報告もその一つ。月次のキャッシュフロー表を持参し、「一円たりとも無駄にせず、しっかりと選手や活動に使わせていただいていることを報告したい」と率直に伝え続けてきたそう。こうした小さな努力を積み重ねることで、スポンサー企業に納得して支援してもらえるような関係性を築いてきたのです。

また、選手と企業のマッチングは、クラブや企業主導で進めるのではなく、選手一人ひとりの意思や適性を踏まえて行われます。入団時には選手と個別面談を実施し、将来のキャリアプランや、就きたい職種をヒアリング。中には仕事と練習を両立しながら、資格取得に挑戦する選手もいるといいます。

“人”が財産となり、まちの力となる

サポーターとともに応援

代表取締役と聞くと堅苦しいイメージを持たれがちですが、「りんりん」の愛称で選手や子どもたち、サポーターから親しまれる岸田さん。選手がミスをしても、ケガをしても、「がはは」と笑って受け止める。その懐の深さに、救われてきた人は少なくありません。

その姿は、岸田さん自身の人柄であると同時に、姫路というまちの気質にもどこか重なります。人を受け入れ、見守り、必要なときには自然に手を差し伸べる。そうした温かさがあるからこそ、選手たちもこのまちに安心して根を下ろせる、そんな土壌がこのまちにはあると語ります。

日中は雇用スポンサー企業で働き、午後5時から午後7時まで毎日練習、週末は試合に臨む選手たち。そんな姿を見て、職場の同僚や地域の方が「そこまで頑張っているなら応援したい」と、家で採れた野菜や、手作りのおかずを差し入れしてくださることも多いそう。「選手たちにとっては地域全体が“家族”のような感覚になっているのだと思います。こうした温かいまちの風土も、このまちに定住する一つの理由になっているのではないでしょうか」と岸田さん。

女子サッカーをひめじに、そしてひと財産に

岸田さんがこれから目指すのは、女子サッカーの競技環境を整えることだけではありません。サッカーを通じて生まれる出会いや繋がりが地域に根づき、人が育ち、人が残る。その循環こそが、やがて地域の“財産”となる。そこに、岸田さんが思い描く“地域創生”の形があります。こうした岸田さんの取り組みは、スポーツを通じて姫路の未来に新たな可能性を広げていくことでしょう。

関連情報

お問い合わせ

姫路市 政策局 ひめじ創生戦略室

住所: 〒670-8501 姫路市安田四丁目1番地 本庁舎3階別ウィンドウで開く

電話番号: 079-221-2833

ファクス番号: 079-221-2384

お問い合わせフォーム