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Vol.30 町家イベント主催者/ 塩本 由紀子さん

  • 更新日:
  • ID:33419

町家を未来へ――人と人、町家を繋ぎ、次の世代へ守り継ぐ

塩本さんの写真

文化や歴史を宿す町家が、静かに姿を消しつつある今。その価値を見つめ直し、人と人との繋がりの中で次の世代へと守り継ごうとしているのが、塩本由紀子さんです。「町家の日」というイベントや、夫と町家で営むカフェ、そして町家に暮らす住人として――あらゆる角度から、その魅力を伝え続けています。「素敵な町家が、このまちにはたくさん眠っているんだよ!」そう、目を輝かせながら語る塩本さん。その歩みと、町家の未来をたどります。

塩本 ゆき子(しおもと ゆきこ)さん

1967年生まれ。兵庫県加西市出身。夫の生家である野里の町家との出会いをきっかけに、その魅力に触れ、現在は夫が営むカフェ「小倉屋」を手伝いながら町家で暮らす。年に一度のイベント「町家の日」を企画・運営し、町家の魅力を発信。さらに、“町家を手放したいオーナー”と“町家に暮らしたい担い手”をつなぎ、町家のあるまち並みを守り継いでいる。

「家」に興味がなかった私が、町家と出会うまで

インタビューでのようす

加西市の古い農家住宅で生まれ育った塩本さん。先代の暮らしが息づく環境で育ったものの、当時は今のように“家”に歴史や価値を特別に意識することはなく、あくまで「自分の家」という存在だったそうです。大学進学を機に京都へ移り、そこで出会ったご主人と結婚。その後は東京、神戸、大阪と、都市部での生活が続き、町家とは無縁の暮らしを送っていました。

町家の写真

町家との初めての出会いは、結婚を機に訪れた、夫の実家である姫路・野里の町家でした。しかしそのときも、「町家」という認識はなく、「古くて暮らしづらい家」という印象だったと振り返ります。

「壊すか、残すか」――町家との向き合いのはじまり

町家についてお話しする塩本さん

ご主人の両親と祖母が暮らし、長年手を入れられていなかった町家。少しずつ老朽化が進む中、祖母の逝去をきっかけに、この家をどうするのかという話が浮上します。そんな中、ご主人が、「この家は残したい」と意見します。

町家を修復できるという発想すらなかったところからのスタート。しかし、町家の改修事例を調べ、京都へ実際の暮らしを視察しに行くうちに、「本で見るきれいな町家じゃなくて、実際に暮らしている人の家を見ると、“あ、住めるんや”って。だんだん自分の暮らしとして想像できるようになってきたんです」と、塩本さんの中でその印象は少しずつ変わっていきました。

そして、「姫路・町家再生塾」の職人たちとともに関わる中で、“古くて暮らしづらい家”だった町家は、“大切にしたい場所”へと変わっていきました。塩本さんの中で、町家に対する見方が大きく変わっていきます。

町家を「残す」だけでなく、人と人を繋ぐ場所に―「町家の日」の誕生

町家の内観のようす

町家を改修することを決意した塩本夫妻。歪んだ柱に合わせて建具をつくる職人や、土を再利用して壁を塗る左官など、地域の素材を選びながら仕上げていく手仕事――。工事の過程で、職人たちの技術と想いを目の当たりにしたことで、単に「町家を残したい」という思いだけでなく、「人の営みや技術も一緒に残したい」という意識へと変わっていきます。

「修復すれば長く暮らしていける町家ですが、修復する技術を次の世代へ継承するためにはたくさんの現場(町家)が必要です。つまり、町家を残すことが、技術を残すことでもあるんです」。こうして、町家は“建物”ではなく、“人と人を繋ぐ存在”として、塩本さんの中で意味を持ち始めました。

町家のまちなみ

そんなある日。京都で2017年に始まった「町家の日」の活動に触れたことをきっかけに、塩本さんは2018年、「町家の日in姫路」を立ち上げます。

野里エリア、イベントのようす

当初は自宅ともう一軒、わずか2軒からのスタートでした。それでも少しずつ地域の人や店舗に声をかけ、関係を築いていきます。知り合いがほとんどいない中でのスタートでしたが、地域の人々が自然と手を差し伸べ、活動は徐々に広がっていきました。

そして現在では、野里エリアを中心に、60軒近くが参加するイベントへと成長しました。

町家を未来へ繋ぐために

夫とともに手がける小倉屋

塩本さんが目指しているのは、観光地としてのにぎわいではありません。かつてのように商店が集い、まちの中で暮らしが成り立つ。人と顔を合わせ、言葉を交わしながら日々を過ごす――そんな豊かな暮らしを支える舞台の一つとして、町家はあると考えています。

その考えを形にしたのが、夫と共に手がける「小倉屋」です。城下町・野里の入口に位置するこの場所は、ただの飲食店ではなく、人が立ち寄り、まちへと歩き出す“きっかけ”となる拠点。ここで過ごす時間を通して、野里のまちや“町家のある暮らし”に触れてもらうことを大切にしています。

塩本さんのご自宅でのようす

「壊すくらいなら、好きな人に残してほしい」。そう語る塩本さんは、町家を手放したい人と、住みたい人を繋ぐ役割も担っています。また、自分たちが京都で経験させてもらったように自身の住まいも“モデルハウス”のように公開し、実際の暮らしを見てもらうことで、理想を実感へと変えていきます。

長い歴史がのこるゆったりとした野里が大好き

特別な肩書きがなくても、専門家でなくてもできる関わり方がある。人と人、町家をつなぎ、豊かな暮らしを守り継ぐ――。塩本さんは今日も、“町家のある姫路のまち並み”を残すため、まちを歩きます。

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