Vol.32 米農家・レストラン経営 / 小川 陽平さん
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農業を通して、人と地域を繋ぐ ―― 姫路の“おいしい”を未来へ

姫路市山田町で米や野菜を育てながら、自社栽培米を使った生パスタの製造・販売、農家レストラン「pasta sorriso(パスタ ソリーゾ)」の運営まで手がける小川陽平さん。イタリアでの暮らしや、まちづくりを学んだ経験を生かし、“農業を通じて人や地域を繋ぐ”という独自の視点で地域と向き合っています。農業、食、文化、人――さまざまなものを結びつけながら、“姫路のおいしいを未来に繋ぐ”挑戦を続けています。
小川 陽平(おがわ ようへい)さん
1982年生まれ。姫路市出身。京都芸術大学卒業後、同大学院修士課程を修了。景観・観光まちづくりを学び、一般企業勤務を経てイタリア・フィレンツェへ移住。帰国後、姫路市山田町で「小川農園」を立ち上げ、農業と食を軸にした6次産業化に取り組む。現在は農家レストラン「pasta sorriso」の運営や、地域づくり活動、若手農業者の育成など幅広く活動している。
食を見つめ直した、イタリアでの日々

多くの観光客が行き交う、姫路駅前エリアで育った小川さん。日常の中で、歴史的景観と観光が共存するまちの魅力に触れてきたことから、高校卒業後は京都の大学・大学院で6年間、景観や観光を軸にした地域デザインやまちづくりを学びました。
転機となったのは大学院時代。文化交流で訪れたイタリア・フィレンツェで、後に妻となる女性と出会います。卒業後に結婚し、「せっかくなら世界を見てみよう」と、ほとんど当てもないまま夫婦でイタリアへ移住したといいます。

現地では、日本に向けたマーケティングの仕事や日本文化を紹介する活動に携わる一方で、イタリアの人々の暮らしや食文化に深く触れる日々を過ごしました。
「イタリアでは“食”が単なる食事ではなく、人と人を繋ぐ文化そのものだった」と振り返る小川さん。その経験は、後に姫路で農業やレストランづくりに取り組む原点にもなっています。
農業未経験からのスタート

イタリアで約1年半を過ごした後、2011年ごろに姫路へUターン。帰国したタイミングで、地元の営農組合が解散することになり、その農地を引き継ぐ形で「小川農園」がスタートしました。
もともと学生時代から農業や地域づくりには関心があり、「地域の未来を考えるなら農業は避けて通れない」と感じていた小川さん。しかし、実際には農業経験はゼロ。田植えも草刈りもわからない状態からのスタートだったそうです。

「理屈では理解していても、自然はその通りに動いてくれない。最初のころは雑草だらけで、なぜ草が生えるのかもわからなかった」と苦笑します。
地元の農家の方々に教えを受けながら、土づくりや水管理、天候との向き合い方を少しずつ学び、10年以上かけて技術を磨いてきました。
また、地域の農家との関わりの中で、農業の技術だけでなく、この土地で受け継がれてきた知恵や文化にも触れてきたといいます。

“農業×食”で生まれた、生パスタという挑戦

小川さんが農業と並行して力を入れてきたのが、“6次産業化”です。
生産だけでなく、加工・販売まで自ら手がけることで、農業の新しい価値を生み出そうと考えました。そこで着目したのが、イタリアの食文化でした。

「せっかく姫路で農業をするなら、この土地ならではの魅力を生かした、自分たちにしかできないことに挑戦したかった」と語る小川さん。妻のルーツでもあるイタリアの食文化と、播磨の豊かな農産物を掛け合わせ、自社栽培の米を使った米粉生パスタの開発に取り組み、農家レストラン「pasta sorriso」をオープンしました。

パスタには、小川農園で育てた専用品種の米粉に加え、姫路産の卵や加古川で品種登録された国産デュラム小麦など、播磨地域の素材を使用。現在は全国のレストランやホテル、百貨店などにも販路を広げています。

また、父親の会社を通じてマルタ共和国との縁から、現地の食文化を取り入れたラビオリ開発にも携わることに。実際に小川さんが作ったラビオリが大阪・関西万博関連で提供されるなど注目を集めていました。
さらに近年は、リゾットなど米の新たな可能性を広げる商品開発にも取り組み、海外からの問い合わせも増えているそうです。

「米の消費量が減っていく中で、“お米をどう未来に繋いでいくか”を考えたい。パスタもその一つの形なんです」
播磨の素材を使ったパスタを通して、姫路の食の魅力を全国へ発信しています。
地域と人を繋ぐ、“農業”というフィールド

小川さんは、農業だけでなく地域づくりにも積極的に関わっています。
姫路のまちづくり活動や若手農業者との交流活動などにも参加し、“食”や“農”を通じて、人と地域、人と人を繋ぐ取り組みを続けています。
その根底にあるのは、「地域の課題を、持続可能な形で未来に繋いでいきたい」という思いです。

「ただ問題を解決するだけではなく、人が“関わりたい”と思える形にしていくことが大切だと思っています」
店舗には姫路産の杉材を活用し、地元の学生やクリエイターと協働するなど、地域資源の魅力を生かした場づくりにも取り組み、次世代へ農業や食文化を繋ぐ活動にも力を注いでいます。
「姫路のおいしい」を未来に繋ぐ

小川さんが感じる姫路の魅力は、「何でもある豊かさ」。
歴史、自然、都市機能、人との距離感――そのバランスがちょうど良く、「新しい挑戦をするにはすごく面白い場所」だと話します。
「姫路は城下町という土地柄、昔から人や文化が行き交う土壌があったと思うんです。これからも、いろんな人が訪れて交流が生まれるまちになってほしい」

農業を通じて、人、地域、文化、未来を繋いでいく小川さん。その原動力になっているのは、“姫路のおいしいを未来に繋ぎたい”という思いです。
播磨の豊かな食材や風景、人との繋がりを大切にしながら、新しい価値を生み出していく――。小川さんの挑戦は、姫路の未来の豊かさにも繋がっています。

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