Vol.34 自転車フレームビルダー / 赤松 綾さん
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その人のための一台をつくり、その先の暮らしまで――姫路で新たな自転車文化を

自分の体に合う自転車がない――。そんな実感から、自転車を「乗る」だけでなく、「直す」「組む」「つくる」まで学び、いつかは自分らしい自転車店を開きたいという夢を抱いてきた赤松綾さん。日本代表として自転車競技にも真剣に取り組みながら、大手メーカーや地域密着型のお店で販売、整備、設計、製作まで幅広く経験を重ね、2022年に姫路で「AYABIKES」を創業しました。目指すのは、日常の中で自転車を楽しめる文化を広げていくこと。姫路のまちで、一人ひとりに寄り添う自転車づくりに取り組んでいます。
赤松 綾(あかまつ あや)さん
1991年、姫路市生まれ。大学時代に自転車競技や自転車店でのアルバイトを経験し、卒業後は、自転車づくりを学べる専門学校に進学。その後は大手自転車メーカーや自転車店に勤務する一方で、シクロクロス日本代表に選出されるなど競技にも真剣に取り組む。2021年に姫路に戻り、翌年、フレームビルダーとして自転車店「AYABIKES」を開業し、2023年に現在の店をオープン。現在はお客さんとの交流や自身が主催するライドイベントなどを通じて、自転車の楽しさを広めている。
自転車との出会い

子どものころから、運動が得意だった赤松さん。中でも、小学生のころから打ち込んだテニスは別格で、大学のスポーツ推薦を受けるほどでした。ですが、厳しい練習の中でプロになるのは難しいと感じ、テニスから離れることに。
ちょうどそのころ始めたのが、自転車店でのアルバイトでした。「まち乗りや、少し遠くまで走りに行ってみたい」--そんな気持ちから、自転車が欲しいと思ったことが最初でした。自転車に関わる仕事にも興味があり、いろいろな経験を積みたいとアルバイトをスタート。
自転車との関わりを深める中で、大学時代には持ち前の体力を生かしてトライアスロンにも挑戦。趣味として楽しみながら、ロードレースやヒルクライム、MTB、シクロクロスなど、さまざまな競技を経験しました。
自転車屋を夢見て、自転車づくりの道へ

初めて自転車を買うときに困ったのが、小柄な赤松さんに合うサイズの自転車となかなか出会えないということ。また、当時はバリエーションも乏しく、デザイン性も満足できるものは少なかったといいます。この時の経験から、「自分のように、乗りたい自転車がないという人はたくさんいるのではないか」と考えるようになります。
その時に芽生えたのが、「いつか自分らしい、特徴のある自転車屋さんをやりたい」という思いです。完成車を販売するだけでなく、お客さんに合わせた自転車を考え、設計して実際に走るまでを自分の店で完結させたい――。そんな考えから、赤松さんは東京にある、自転車づくりを本格的に学べる専門学校へと進学を決意。設計から製作、組み立て、メンテナンス、そして走行まで、自転車に関するすべてを学ぶ、自転車尽くしの3年間を過ごしました。
多角的に自転車と向き合った社会人時代

専門学校卒業後は、世界的大手自転車メーカー「GIANT」に入社。販売や接客など、現場での経験を積みました。その後、名古屋の自転車店「Circles」に転職。地域に根ざした自転車カルチャーを発信するショップで、販売や整備、イベント運営、カスタム提案など幅広い業務に携わりました。

同時に競技にも真剣に取り組み、多彩な路面や障害物のあるコースでタイムを競う「シクロクロス」では日本代表になるなど、さまざまな自転車競技で実績を重ねました。
こうして、競技で活躍する一方で、メーカーやショップでさまざまな視点から現場を経験し、多様な角度から自転車に関わり続けた経験が、現在の仕事の土台になっています。
さまざまな経験を生かし、夢を実現

競技にも真剣に取り組んできましたが、「自転車に関わる仕事をしたい」という夢は変わらず、2021年に地元・姫路に戻って自転車店を開業することを決意します。準備期間を経て、翌年11月に「AYABIKES」を創業。2023年12月に現在の店舗をオープンしました。店では、完成車の販売や整備だけでなく、オーダーフレームの相談にも対応しています。


SNSでの発信やこれまでの競技・仕事での繋がりもきっかけとなり、赤松さんが営む「AYABIKES」の活動は少しずつ広がりを見せています。地元の人はもちろん、神戸や大阪、愛知や東京など、県外からはるばる来てくれる人も多いそう。子ども向けの自転車やまち乗りの自転車から、自分に合った一台をじっくり選びたい人の相談まで幅広く取り扱い、姫路というまちで“自転車文化”を支えています。

オーダーメイドの場合は、すぐに形にするというよりも、家づくりのように対話を重ねながら、時間をかけてその人らしい一台をつくっていきます。だからこそ、お客さんから「この人にお願いしたい」と思ってもらえる関係づくりを大切にしています。
日常の自転車から、新しいカルチャーへ

日常の移動に車や自転車が欠かせない姫路では、「自転車=通学や買い物のためのもの」というイメージになりやすいと赤松さんはいいます。特に生活の足として浸透しているママチャリは、手軽で便利な一方、自分の体格やライフスタイルに合わせて選ぶという感覚は、まだあまり広がっていません。そのため、デザイン性や機能性、乗り心地を兼ね備えた“自分に合った自転車”のニーズや、それを提案する販売店も、まだ多くないのが現状です。
ですが赤松さんは、「だからこそ、この地域でやる意味がある」と話します。
「すでに文化ができている場所でやるより、姫路で少しずつ、自転車がもっと暮らしに寄り添う存在になっていけばおもしろい。そんなカルチャーをここからつくっていけたらと思っています」。

姫路城を中心に緑が多く、自転車に乗る人にとって快適にサイクリングを楽しめる道が数多くあることにも、地域の大きな可能性を感じている赤松さん。環境面から見ても、自転車は“生活に寄り添うカルチャー”として、多くの人に自然と親しまれていくのではないかと考えています。
その思いを形にするため、赤松さんは定期的にイベントへ出展したり、ライドイベントを開催したりと、自転車文化を広げる活動にも積極的に取り組んでいます。
さらに、まち中で使われるレンタルサイクルなどについても、自転車に関する相談や整備面で関わる機会があり、姫路で自転車を楽しめる環境づくりにも少しずつ携わっています。
「自転車を、もっと日常のそばに」。姫路に新しい自転車文化を根づかせるため、赤松さんは今日も、自転車とまっすぐに向き合い続けています。

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