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HTLV-1感染症

  • 更新日:
  • ID:28305

日本人の100から150人に1人は、HTLV-1キャリア(無症状のままウイルスを持続的に保有している人)と推定されています。もともとは九州や沖縄地域など南西日本に多いと言われていましたが、人口の移動により都市部でも増加傾向にあります。

HTLV-1に感染しても、必ず病気を発症するとは限りません。また、HTLV-1は感染力が弱く、感染経路も限られています。正しい知識で感染を予防しましょう。

HTLV-1とは

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell Leukemia Virus Type1)の略称です。このウイルスは、血液中の白血球の1つであるTリンパ球に感染します。

感染経路

HTLV-1は、感染者の血液、母乳、精液などに含まれるウイルスに感染した細胞が、生きたままの状態で大量に体内に入り込むことで感染します。

そのため、主な感染ルートは、母子感染(主に母乳)、性的接触による感染、血液感染になります。

HTLV-1は極めて感染力が低いため、日常生活では感染しません。ただし、注射器の共有や血液が付着した歯ブラシやカミソリなどの物品の共有は、感染のリスクがあります。

症状

HTLV-1に感染しても、自覚症状はありません。また、感染者の約95%は、生涯を通してHTLV-1感染が原因となって起こる病気になることはありません。

HTLV-1キャリアは、生涯の内に約5%の頻度で成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)と呼ばれる血液の病気を、約0.3%の頻度でHTLV-1関連脊髄症(HAM)と呼ばれる病気を発症します。また、約0.1%の頻度でHTLV-1関連ぶどう膜炎(HU/HAU)という眼の病気を有していることが知られています。

予防方法

母子感染の予防

母子感染は、主に母乳中に含まれるHTLV-1に感染したTリンパ球が主な原因です。最近では、ごくまれに胎盤からの感染の可能性もあるという研究データが得られています。

母乳を介した感染の予防には、母乳を全く与えずミルクを与える方法が最も有効です。また、90日未満の短期間のみ母乳を与え、以降はミルクを与える方法(短期母乳栄養)も有効です。

HTLV-1に感染しているかどうかは、妊娠中に行われる妊婦健康診査の中に、HTLV-1の抗体検査(血液検査)が含まれており、無料で受けられます。

性的接触による感染の予防

性的接触によるパートナーからの感染は、精液等に含まれるHTLV-1に感染したTリンパ球が主な原因です。特に長期間にわたって性的接触が続く夫婦間での感染が多いと言われています。

性的接触による感染を防ぐにはコンドームの使用が有効です。

血液感染の予防

血液が付着した歯ブラシやかみそりを共用すること、消毒が不十分な器具を使って刺青(いれずみ)を入れたり、ピアスの穴を開けること、同じ注射器を使って違法薬物などの回し打ちをすることは、感染の可能性がある危険行為ですので絶対に行わないようにしましょう。

HTLV-1によって起こる病気

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL:adult T-cell leukemia-lymphoma)

40歳以下の発症は極めてまれで、発症のピークは60歳代後半です。男性にやや多い傾向があります。

症状は、足の付け根、首、わきの下のリンパ節の腫れ、だるさ、発熱、発疹などがみられます。また、免疫機能を担うリンパ球が癌化するため、免疫機能が著しく低下し、健康な人がかからないような深刻な感染症にかかることもあります。このような症状がある場合は、血液内科の専門医のいる病院を受診してください。

HTLV-1関連脊髄症(HAM:HTLV-1-Associated Myelopathy)

国の難病に指定されています。

患者は全国で約3,000人いると推定されていて、男女比は1:2から3と女性に多い傾向があります。40から50歳代で発症する人が多いですが、10歳代など若いころに発症する人や60歳以上になって発症する人もいます。

原因はまだはっきりわかっていませんが、HTLV-1に感染したTリンパ球が脊髄に入り込み、炎症を引き起こすことが原因と言われています。

慢性的な炎症により、脊髄にある神経細胞が傷つけられます。脊髄には、両足や腰、膀胱、直腸につながる神経が通っていることから、足がつっぱったり、力が入らないなどの運動障害やしびれ感や痛みなどの感覚障害、排尿困難や頻尿などの膀胱機能障害、便秘などの排便障害が現れます。このような症状がある場合は、脳神経内科の専門医のいる病院を受診してください。

HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU/HAU:HTLV-1 Uveitis/HTLV-1-associated Uveitis)

眼のぶどう膜に炎症が起こる病気で、男女比は1:2と女性に多く発症し、HAMとの合併がよく見られます。

症状は、飛蚊症(眼の前に虫やゴミが飛んでいるように見える)、霧視(かすんで見える)、眼の充血、視力の低下です。このような症状がある場合は眼科の専門医のいる病院を受診してください。

参考資料