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Vol.50 地域コミュニティ主宰 / 中村 愛子さん

  • 更新日:
  • ID:34469

親も子も、自分らしくいられるように。自身の子育てが変えた“居場所づくり”への思い

中村さんの写真

子どもたちがのびのびと過ごせる環境をつくりたい――。学生時代からボランティア活動に参加し、卒業後は保育士として子どもたちと向き合ってきた中村さん。自身の出産・子育てをきっかけに、そのまなざしは子どもだけでなく、そばにいる親へも向くようになりました。現在は“こどもとおとなのイベントスペース”「YAHOHO!」を中心に、親子が楽しみながら人と繋がり、ほっとできる居場所づくりに取り組んでいます。中村さんが大切にする「ほんの+1」に込めた思いと、これから描く居場所のカタチを聞きました。

中村 愛子(なかむら あいこ)さん

姫路市出身。「NPO法人生涯学習サポート兵庫」の講師を務める。同法人では、過去に「ひめじ森のようちえん」など子どもに関わる活動に携わり、2016年には兵庫県から「若人の賞」を受賞。現在は“こどもとおとなのイベントスペース”「YAHOHO!(ヤホホ)」を主宰し、講師を招いてママが気軽に習い事を体験できるイベントや、子ども向けの「宿題食堂」なども企画・運営している。

自由に、のびのびと。その経験を今度は子どもたちへ

釣りを楽しむ中村さんのようす

姫路市の南部、海が身近にあるのどかな白浜で育った中村さん。海へ散歩に出かけたり、釣りをしたり、家では親が持ち帰ってくれた段ボールを使って夢中で遊んだり。幼少期には、いつも「やってみたい」を自由に楽しめる環境がありました。

「親からは『元気やったらそれでいいから、やりたいことをやり』と言われて育ちました。今思えば、それが自分の考え方にも繋がっているのかもしれません」。

子どもの好奇心や意欲を大切にしたい――。自分自身がのびのびと育ててもらった経験こそが、現在の活動の原点になっています。

学生時代におこなったボランティア活動のようす

高校では健康福祉コースに進み、児童施設などでのボランティア活動を通して「子どもと関わる仕事がしたい」と思うように。卒業後は短期大学で保育を学びながら、人形劇のサークルや青少年活動のボランティアにも参加し、親子向けイベントの企画・運営にも携わりました。短大卒業後は保育士として約6年間勤務する一方、週末は学生時代から繋がりのあった、子どもの体験活動をサポートするNPOでも活動を続けました。

保育士として子どもたちと向き合う中で、中村さんの胸には、次第に「一人ひとりの好奇心や意欲をより大切にできる場所をつくりたい」という思いが芽生えます。そして、「自然の中なら、子どもたちがより自由に、興味の赴くままに過ごせるのではないか」――そんな思いを周囲に話したことをきっかけに、2012年、所属するNPOで親子向けの自然体験プログラム「ひめじ森のようちえん」を立ち上げました。

ひめじ森のようちえんでのようす

森を散策して草花に触れたり、集めた木の実や枝を使って工作をしたり。決められた遊びを楽しむのではなく、自然の中でそれぞれが興味を持ったものに触れながら、思い思いに過ごす子どもたち。その姿を間近で見守りながら、中村さん自身も、子どもが持つ「やってみたい」を尊重することの大切さを実感していきました。

「当時はとにかく、子どもがのびのびと楽しめることを一番に考えていました」と振り返る中村さん。幼いころ、自分自身がそうしてもらったように、子どもたちの好奇心や意欲に寄り添うことは、中村さんにとってごく自然なことだったのかもしれません。

親になって初めて分かった、子育ての“歯がゆさ”

家族とすごす中村さんのようす

結婚、そして第一子の出産を機に、それまで仕事やボランティア活動が中心だった中村さんの生活は一変しました。

「これまで自分のやりたいことを欲張りなくらいいろいろやってきたからこそ、子ども中心の生活になって、自分のタイミングで動けなくなったことに戸惑いやもどかしさを感じたことも正直たくさんありました」。

家族の協力があってもなお感じたという、社会から取り残されたような感覚。思い描いていた生活と現実とのギャップに戸惑う中で、それまで自分には見えていなかったものにも気付きました。

「保育士のときも、ボランティア活動をしていたときも、子どもがどうすれば楽しめるかはずっと考えていたけれど、親のことには全然目が向いていなかったなって」。

子どもが楽しく過ごすためには、そのすぐそばにいる親が笑顔でいることも大切。「親が元気じゃないと、子どもも元気でいられない」という気付きが、その後の活動の方向性を変えていきました。

自身が救われた経験から生まれた、親のための居場所

パン作り教室のようす

初めての子育てに戸惑いを感じていたころ、中村さんが通い始めたのが、ふとネットで見つけた、子どもを連れて参加できるパン教室でした。子どもが楽しそうに過ごす姿を見ながら、自分も好きなことに夢中になれる時間が、思っていた以上に心を軽くしてくれました。

「こんな時間を親子で楽しめる場を自分でもつくれたら」。そう考え、育児の合間にパン作りの資格を取得。2018年には、パン作りを教わった先生との縁もあり、親子パン教室「YAHOHO!」を始めました。

宿題食堂のようす

現在、親子パン教室には年間約80組が登録し、赤ちゃんのころから参加していた子が、今では小学生になって通っていることも。さらに、人との繋がりをきっかけに少しずつ活動の幅を広げ、今では講師を招いてママが気軽に習い事を体験できるイベントや、子どもたちが宿題をした後にみんなで夕食を囲む「宿題食堂」など、親子が主体となった交流の場を創出しています。

活動を続ける中で中村さんが感じているのが、親同士の「横のつながり」の大切さ。何かを相談するために集まらなくても、中村さんがつくるコミュニティを通して、ふとした会話の中で子育ての悩みを共有したり、先輩ママからアドバイスを聞いたりすることができます。参加者から、そんな何気ない会話に救われたという声を聞くことも多く、親同士が気軽に悩みや思いを共有できる場の必要性を実感しているといいます。

「ほんの+1」が自信に繋がるように

地域コミニティのようす

中村さんが活動を通して大切にしているのが、「親と子のいつもの毎日に、“ほんの+1”のハッピーを」という言葉です。このメッセージには、「いつもの毎日」と「ほんの」という部分に、中村さんのある思いが込められています。

「ずっと笑顔で、優しいお母さんでいるのは難しいと思うんです。だからこそ、YAHOHO!で過ごす中で、『今日は一緒にこんなことができたな』『楽しそうにしている姿がかわいいな』って思ってもらえたら。特別な体験じゃなくても、日常の中に親子で楽しめる時間があって、自分の子育てに、ほんの少しでも納得できる瞬間があったらいいなと思っています」。

キッズマーケットのようす

これまで、親子の思いに真摯に寄り添ってきた中村さん。最近では、自らイベントを主催するだけでなく、子どもや親子のために何かをしたい人や、自分の得意なことを生かしたい人と一緒に企画を考え、その一歩を後押しすることにもやりがいを感じています。

中村さんにとって何よりの喜びは、人と一緒に前向きに動きながら、それぞれの「やってみたい!」をカタチにしていくこと。その楽しさが自身の生きがいとなり、活動を続ける原動力にもなっています。

もっと気軽に、もっといろんな人と“接点”を

親子イベントのようす

そんな中村さんには今、新たに思い描いている夢があります。

2027年春には、現在のイベントスペースから白浜の新開公園前へと拠点を移し、カフェをはじめ、親子で楽しめる体験やコミュニティ、放課後の子どもたちの居場所、専門家に相談できる仕組みなど、子育てにまつわるさまざまな機能を備えた「FAMILY & KIDS HUB」としてオープンの準備を進めています。

新たな拠点となる白浜は、中村さん自身が育った思い入れのある場所。幼いころから海へよく遊びに出かけ、今も自身の子どもたちと海遊びや釣りを楽しんでいます。そんな白浜での暮らしを通して、中村さんは姫路ならではの子育て環境にも魅力を感じています。

「まちもあって、海もあって、それが身近なところで完結するまちって、実はなかなかないと思います。ほどよく田舎で、でもお店もあって、住みやすい。そんな居心地の良いまちだからこそ、親子にとっても、人や地域と無理なく接点が持てる場所をもっと増やしていきたいですね」。

親と子のいつもの毎日にほんの+1のハッピーを

子どもから親へ、そして地域のさまざまな人へ。出会いや関わりを重ねるたびに、中村さんがつくる居場所のカタチも少しずつ変わってきました。これからどんな人と出会い、どんな「+1」が生まれていくのか。中村さんは、これからもだれかの「やってみたい!」を後押ししていきます。

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